幼い彼らに注いだ炎は
泣き叫ぶ喉を静かに灼いて
ベビーベッドから見上げた空こそ
彼らの知りうるその全てだった。
「――。」
例えば夢をみたその先に
陽だまりが在ると誰かが云っていて
僕等がそれに届くためには
些か背が足りないのだろう、と。
いつか僕等にはその権利が
与えられていないことに気づいて
かつて抱いた未来や理想は
羽化を待たずに腐って落ちた。
たとえば
牙を持たない憐れな獣は
空腹にその四肢を冒されて
籠の外に放たれた小鳥は
羽撃けずに土を撫でる
視えていたものが視えなくなって
足跡はもう増えそうにもない
失くすものすら失くしていく
宛ら傷付き横たわる野良猫
ただ
生かされていく
僕等。
小賢しい比喩に身を窶して切れ端に書き留めた台本が
相応しい結末を導くなら望むことなどそう無いだろう
産声を上げることがこんなにも酷いことなのだと知っていたなら
僕等は幸せという言葉の意味を理解できたというのだろうか
ゆえに
脚を挫いた無様な子鹿は
愛情をついに知ることもなく
籠の中で愛でられた小鳥は
羽撃き方すらも忘れて
掌に広げた望みすら
膝を落とせば刹那、奪われて
過ちを餌に肥大した
葬列は蜈蚣の足並みのように
醜い貌で泣き、笑う。
視えていたものが視えなくなって
足跡はもう増えそうにもない
掌に広げた望みすら
膝を落とせば刹那、奪われて
失くすものすら失くしていく
宛ら傷付き横たわる野良猫
忌まわしいセカイの果てで。