ありんこ書房

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エドワード・ゴーリーの絵本「不幸な子供(Hapless Child)」が持つ不可思議な魅力

      2016/03/20

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ごきげんよう、蟻坂(4risaka)です。
みなさま、絵本は好きですか。わたしは好きです。

「大人の絵本」というカテゴリ

ただいま見出しに書きましたカテゴリは、結局は出版社の戦略でしかありませんが、
要するに物語が哲学的だったり難解だったり、絵が怖ろしいタッチの絵本もありますよ、というハナシです。

ただ、絵本というのはそもそも文学のひとつでございますから、
難解がどうのというより受け手がどう感じ取るかによって
大人も子供も千差万別な愉しみ方ができるというものでしょうし、それが表現の本質におもえます。

……いきなり超脱線しました。
ええと、そんな「大人の絵本」というカテゴリでもって
今日評価を得ています、「エドワード・ゴーリー」という作家さんの絵本を紹介します。

何やら不穏なタイトルですが

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「不幸な子供(Hapless Child)」というタイトルの本です。
あらすじとしては、裕福な家庭に生まれ育ったひとりの女の子の運命を
淡々と独特の線画で描き切った物語です。

どんな絵本?

中身は上の画像のように、
原文と挿絵が見開きに淡々と載っているシンプルなものとなっております。

氏の文章は独特の韻を踏むことで知られています。
せっかくなので左側の英文にも目を向けてそのリズムの良さに感嘆しつつ、
右側の訳文で物語を知り、その世界の昏さに心を打たれます。

線画のタッチ

アイキャッチにちらとお見せしてます通り、
氏の絵本は、黒一色の、影を強調した鋭くも絵本らしいタッチの線画が特徴的です。

「不幸な子供」に限らず、氏の絵本は
淡々と不幸や理不尽な悪意を描くものが多いのですが、
その文章が、絵が、全てにおいて禍々しく調和して独特の雰囲気を放っています。

救いがない物語

さきほど、ひとりの女の子の運命、とシンプルに表しました。

原本は1961年に出版されたものです。その一世紀前くらいに遡ると、
女の子が主人公で絵本の題材に会う……といえば「童話」が思い浮かびます。

実際、中世的な世界観で語られるその物語は童話的でも在るのですが、
氏の物語には、童話のそれと比較して決定的に欠けているものがあります。

ハッピーエンドが、ありません。

この「不幸な子供」もタイトルが示します通り
最後まで徹底的に救われない結末を迎えてしまいます。

救いがない結末だけなら他の文学でも絵本でもいくらでもあるでしょう。
氏の絵本が「絵」という表現力の強い媒体を使っておきながら凄いのは、
最初から最後まで終始表情を変えないところだとおもいます。

朝が夜になるように、花が咲いて枯れていくかのように、
淡々と普遍的な出来事の一部であるかのように、
主人公は死や悪意の下に生かされていきます
この静かな悪趣味と現実の境界線のような絶妙なバランスをほかに描けるひとは居ないでしょう。

細かな仕掛け

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1ページ1ページ、白と黒で描かれた挿絵には
かなり精細な書き込みがなされており、表現としての完成度の高さが伺えます。

「不幸な子供」の場合、全てのカットにこのような謎の生き物が描いてあります。
この生き物は物語には一切関わってきませんし、カットによっては
探さないと見つからないくらい隅に書いてある程度なのですが、
なんらかの解釈の余地を読者に投げかけて来ます。

これが描かれたのは1960年代、絵本の舞台はフランスだそうですが、
非常に近代なので時代背景を省みると戦争などの話しかパッとおもいつきません。

氏の表現の方向性から勝手に連想すると、そんな世相のような俗っぽいものではなく、
もっと本質的な人間の何かにフォーカスした意図があるように思えますが、
まだまだ読み込みが足りておらず、巧いこと考察できておりません。

まだまだですね。

まとめ

さきほど述べました線画の白黒が生み出す空気と合わせて、
まさに「うっとり」するような破滅の感覚が大好きです。

何より、これは「絵本」です。
わたしがエドワード・ゴーリー氏の絵本をおすすめしたいのは、

  • 活字の本を読まない
  • 分厚い画集はちょっとお高い
  • でも頽廃的な表現物に興味がある

というような、コンテンツの量が多い表現物が多いのは苦手だけど、表現物に触れてみたい方です
(本の虫さんからしたら「そんな奴居るのかよ!」っておもうかもしれませんが、少し前までわたしがそうでした)。
全国の本屋さんのほか、以下のようにAmazonでも買えますので
是非お手にとって見てくださいまし。

また、氏の特徴である「独特な韻の踏み方」にフォーカスするならば、
AtoZの頭文字を持つ子どもたちが次々理不尽な目に遭うという物語である
「ギャシュリークラムのちびっ子たち」がおすすめです。
リズムの愉しい英語で、本当に軽快に読めます。

あ、結構出版されて長いので、この広告はもとより古本屋さんでも手に入るとおもいます。

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