ありんこ書房

今日から使える創作ノウハウ。時々エッセイ。ゴシックカルチャー。

MOE特別編集「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」から始める、大人の絵本の世界

      2016/04/26

スポンサードリンク

わたしもまだまだゴーリーをよく知らないことがわかりました。
御機嫌よう、蟻坂(@4risaka)です。

エドワード・ゴーリー特別編集の雑誌が出ました

絵本を特集した雑誌に「月間MOE」というものがあります。
この特別編集版として、カルト的人気を誇る絵本作家「エドワード・ゴーリー」氏の特集版が出ていたので
買ってみました。

内容は、ゴーリーの絵本の持つ魅力や、その作品のキャラクター、
また、絵本以外のブックデザイナーやイラストレーターとしての側面や
それらに引き寄せられた複数の作家によるインタビューがまとめられたものとなります。

で、わたしもそこそこゴーリーの絵本は知っているつもりだったのですが、
いかんせん彼はアメリカの作家ですので、英語圏に出てみないとわからない情報の方が多く、
「ああ、訳文を読んでる程度じゃ全然わかってないんだなー」と再発見するに至りました。

というわけで、簡単に内容を紹介してみます。
ゴーリーを知っている方も、知らない方も、こちらの特集を読むことで
ゴーリーの作る「大人の絵本」の価値を発見できるはずです。

特集の内容を紹介するよ

ポストカード

これ、素晴らしいですね。ポストカードが8枚付いています。
gorey2
まさか使うわけにはいかないので、どこかにディスプレイして飾りたいところです。
「エドワード・ゴーリーを特集した本」は、「エドワード・ゴーリーの世界」が有名ですが、
こんな豪華なオマケがついているのはMOE特集くらいなもんだと思います。

作品の魅力

はじめてエドワード・ゴーリーを読む人向けのコンテンツが
前半に揃っています。

ゴーリー作品は、モノクロの非常に書き込みの細かい壁紙や
不気味なキャラクター、あらゆる作品に必ず出てくる毛皮のコートを着た男性や可哀想な子供といった
記号的でありながらその目的が掴めないモチーフがたくさんあるのですが、
どういうシチュエーションで登場し、どういう位置づけなのかという話が書いてあります。
gorey3

それと、ゴーリー作品ってナンセンスなのかバッドエンドなのかよくわからないものが多く
「不条理で救いのないお話」であることに何を求めるのか、見出すのかが読み手に寄ってかなりバラけます。
この特集は、作家へのインタビューを通じてその様々な解釈を伝えてくれます。
gorey5

そうなんです、カルト人気の傾向が強いゴーリー作品において、
「感想や解釈をシェアする場面」というのは極端に少なくて、他人の考えを拾う機会が無いんですよね。
そこを上手く補完してくれているので、一度読んだお話でも新たな発見が得られます。

編集者のブラウン氏と訳者の柴田氏の対談のところが興味深かったです。

たとえば『ギャシュリークラムのちびっ子たち』は、ただの残酷な物語ではありません。ヴィクトリア朝によく描かれた、子供への教訓話の延長として読むべきものなのではないかと。
:
(中略)
:
この本は「Aはエイミー かいだんおちた」から始まりますが、当時は二階建ての家では階段のそばに行ってはいけないと教えることが当たり前でした。なのに、エイミーは身を乗り出して、その結果落ちちゃった。「Kはケイト まさかりぐさり」も、幼い子どもが危険な道具を扱ってはいけないのに、好奇心から持ってしまって自分にぐさりと……。そんな風に読み解いてみるのも、面白いのではないかと思います。

「おお、なるほど!」と驚きを得る一方で、自分に教養が足りてないことに気づかされたのでちょっと反省です。
当時の世相や環境を振り返ってみると、更なる発見があるということなのですねー。

ゴーリーという人物

「エレファント・ハウス」こと、ゴーリーの邸宅は現在ミュージアムになっているようです。
ミュージアムの作品を通じて、ゴーリーという人物に迫ったお話も特集されています。
gorey4

こんな恐ろしいお話、不条理な話ばかりなのだから、さぞ不思議な人物だったのだろう、と思いましたら
それが全く違いまして、非常に温和で親切な人物だった、と各種インタビューを通じて述べられています。

ゴーリーに限った話ではなくて、名の知れたアーティストというのは
作品には鬼気迫るものを感じても、個人に迫ると意外なほど人格者である、というパターンが少なくありません。

では何が彼をこのような作品の制作に駆り立てたのか、特集では詳細に述べられていませんが、
先ほどの「ギャシュリークラム」のように、真のテーマを不気味さの殻で隠してしまっているのかもしれませんね。
やはり、教養を付けてもう一度読み返してみる必要がありそうです。
また、作品の印象で人格を判断するのはやっぱりダメですね。こちらも少々反省です。

まとめ

MOE特別特集「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」を読むことで、
わたしがまだまだエドワード・ゴーリーを知らなかったこと(これからもっと知れること)がわかりました。

また、「大人の絵本」というカテゴリを知るにあたって、それらの経験のない方には
この特別特集を手にとり、ゴーリーの世界に一歩踏み入れてもらうのが良いんじゃないかというハナシでした。

ここのところナンセンス文学の文脈で語られる表現物ってめっきり減ってしまって、
エドワード・ゴーリーはそういった創作成分を補充したい作家の皆様にもおすすめしたい作家でございます。
洋書・訳書ともに大量に揃っていてどこから手を付ければいいのかわからない方は、
まずこの特集から入ってみるのが理解の役に立つことでしょう。

また、弊ブログでも僭越ながら過去に紹介記事を書いたことがありますので、
合わせてご覧ください。
→ 【 エドワード・ゴーリーの絵本「不幸な子供(Hapless Child)」が持つ不可思議な魅力

 - エッセイ, ゴシック , , ,