漫画「ダンス・マカブル」を読んで、西洋の暗黒の歴史からインスピレーションを得よう
2016/05/28

描写を学ぶには漫画はちょうどよさそうなので、たまに漫画の話でも。
御機嫌よう、蟻坂(@4risaka)です。
西洋の暗黒の歴史とは
西洋、具体的にはヨーロッパには古代から中世、そして近代に至るまで
さまざまな暗黒の歴史があると言われています。
具体的には処刑制度、拷問、魔女狩りなどの宗教裁判が挙げられます。
また、数々の不可解な人物のエピソードにも枚挙に暇がありません。
しかし、これらの歴史をまともな資料で勉強するのはちょっと骨ですし、
創作の資料として活用したいだけであればそんなに時間をかける必要性もありません(よほどのこだわりがあれば別ですが)。
そこで、漫画「ダンス・マカブル」を読んで簡単に代表的なものを楽しく視覚でさらってみましょう。
漫画「ダンス・マカブル」で紹介される西洋の歴史
どんな内容?
「ダンス・マカブル」は、大西巷一さんの短編集漫画です。
Kindleストアでこの間安売りしてたので買っちゃいました。
内容はまえがきの通り「西洋の暗黒の歴史」とされる史実について取り扱った短編集となっており、
一話一話が歴史上のできごとに基いて淡々と描かれています。
描いている内容は、古代〜中世ヨーロッパにおける有名なエピソードで、具体的には以下の5件です。
- ジャンヌ・ダルク
- カリグラ
- スペイン異端審問
- バートリ・エルジェーベト
- イエス・キリスト
全10話立て、各エピソード2話、1エピソード30ページくらいのコンパクトで読みやすいまとまりがあります。
具体的な処刑・拷問手段について説明されている
これ、わたしが「漫画でインスピレーションを得られる」と判断した大きな理由なのですが、
格エピソードで主人公が遭ったり行ったりする残忍な拷問や処刑手段が、
美麗なイラストとともにナレーション付きで解説されているんですよね。
こちらは33ページから引用、ジャンヌ・ダルクは異端審問から火刑に処され非業の死を遂げた人物ですが、
その炎の苦しさの描写と、淡々とした解説のコントラストが素晴らしいです。
これを読むことで、例えばジャンヌ・ダルクの話であれば以下のことがわかります。
通常 致命的な火傷を負う前に
窒息または不完全燃焼による一酸化炭素中毒で死に至るジャンヌも
数分から数十分で
息絶えたと思われる
へーそうなんだーこれ創作に使えるぞ!ってなりませんか(?)。
いやいやこれくらいネットで調べたらわかるだろ、って思うかもしれませんが、
漫画にしろ実用書にしろ、本は必要な情報がコンパクトにまとまって提供されるところが素晴らしいのです。
あとやっぱり漫画ですから、絵、いいですよ。
もちろんジャンヌの例に限らず、
カリグラの狂気、バートリーの血液に対する倒錯、そしてキリストの磔刑について、
強烈な暴力と性描写を伴う綺麗なイラストで鮮烈に描かれています。
先程も書きましたがナレーションで何が痛くて苦しいのか書いてあるところが良いです。
理不尽で救いはない
いうまでもないんですが史実を元にしているので全部バッドエンドです。
主人公は理不尽に拷問されて死にます。あるいは異端審問官のほうが適切に裁かれることもありません。
これにプラスして、いわゆる「悪役」ポジションのひとの顔が良い感じにゲスくて素晴らしいです。
こちらは188ページ。ローマ帝国の総督ピラトゥスの顔がいいですね。
という具合に、異端審問にかけられたり、或いは理不尽に虐待される登場人物は全て清く聡明な顔つきをしており、
一方で、悪役は徹底的に歪んで描かれています。カリグラやバートリーは美形ですが、それがなお恐ろしさを増しています。
なんにせよ、ここが漫画の真髄ですね。
淡々とした拷問器具や手法の描写であれば活字でも読めるのですが、この絵のせいで腸煮えくり返る感覚があったり、
あるいは強烈な流血描写などで残忍さに磨きがかかるというのが非常に印象に残って愉快です。
まとめ
という具合に、西洋の暗黒の歴史に登場し、非業の死を遂げた人物や
それに関わった処刑方法、拷問器具などについてエピソードを交えて紹介するような短編集「ダンス・マカブル」の紹介でした。
歴史を真正面から調べると眠くなってくるし何が苦しくて辛い(=なぜその処刑方法である必要性があったのか)を捉えにくいのですが
やっぱり漫画はいいですね。普段活字ばっかり読んでますが視覚の強さというものを思い知りました。
登場人物の悲痛な表情なんかがインスピレーションを刺激するので、ゴシッカー視点でもおすすめです。
ちなみに二巻構成になってます。オムニバスなのでばらばらでも読めますが、
「後味の悪い短編集漫画」というのもなかなか少ないので、そういうの好きな方はぜひ。
個人的にはバートリーのエピソードが性描写・鉄の処女・レズビアン描写・家畜同然に扱われる農奴の女、という
インモラル大喝采な感じで一番好きです。