ありんこ書房

今日から使える創作ノウハウ。時々エッセイ。ゴシックカルチャー。

DEANとStrictly 7 Guitarsのtwitter喧嘩事件に見るSNSマーケティングの例

   

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記事タイトルが正直無理矢理感ありますが、おもしろかったので淡々と書いてみました。
御機嫌よう、蟻坂(@4risaka)です。

今起こっていること

DEAN Guitars」と「Strictly 7 Guitars」というアメリカのギターメーカーの日本代理店が中の人を務めるtwitterアカウントの変な行動が非常に型にはまっていて面白かったので、
創作を行う皆様が宣伝・周知のための工夫のひとつとして活かすためにケーススタディ的記事を書くことにしました。それでは御覧ください。

ことの発端: twitterでDEANとS7Gが寸劇を始める

6月18日くらいでしたでしょうか、twitterであるtweetを見かけました。

「DEAN GuitarsとStrictly 7 Guitarsがtwitterで喧嘩してる」

まぁコンプライアンス的に考えて字面の通りじゃなくてそういうやり口だよねと直感したわたしは、当該twitterアカウントを覗いてみたわけですが、ちょうどこんな風に

今時炎上が好きなついったらーでも食わぬ低レベルな応酬ですが、たぶん真面目に罵倒すると口が滑って本当に炎上するからこうしたんだと思います。巧い舵取りだと思います。画像の無断転載を突かれないか不安でしたが。

それはおいといて、こんな風に2週間に渡って延々喧嘩してました(最後の方は観客の熱量も下がってきたせいか落ち着いてましたけど)。

7月、「IMGPヘビーメタル級王者決定戦」が始まる

そうして喧嘩を2週間くらい始めた後、突如「IMGPヘビーメタル級王者決定戦」なるものを両アカウント突然始めました。
内容はGoogle Docsのページを使った投票企画です。

IMGPヘビーメタル級王座決定戦

これだけに限らず、デジマートと島村楽器がギターの販売フェアを開催するアナウンスをしました。

S7G vs Dean!? IMGPヘビーメタル王者決定戦開催!! 梅田ロフト店 店舗情報-島村楽器

賢明な読者の皆様はもうお気づきですね、そう、これはtwitterを利用したデジマートと楽器店・メーカー共催の販売企画だったわけです。
小競り合いは単なる布石で、真の目的は両者が機材の販売を拡大することです。要するにSNSマーケティングの典型例です。

普通の宣伝よりSNSで小競り合いをする販売企画が良いワケ

2016年となってはちょっと古いところがありますが、消費者の行動心理をマーケティング的に分析したフレームワークに「AISAS」というものがあります。これは、消費者はインターネットを活用して以下のように商品購入までのプロセスを踏み、伝導するという構造を示したものです。

  1. Attention(注意/認知)
  2. Interest(関心)
  3. Search(検索)
  4. Action(購買)
  5. Share(共有)

今回のこの手法も割と消費者がこのプロセスに従うことを前提として組んでいるように思えます。ひとつひとつ見ていきましょう。

小競り合い→Attention、Interest

SNSでメーカーの公式アカウントがしょうもない応酬をしているというのは、そのメーカーのファンの人からすると面白いですし、ギターに興味があってそのブランドを知っている人からすると「なんなの寒いよ」という感想を抱く印象でしょうか。
ところが本質は「寒いよ」でもなんでも消費者を巻き込むことそれ自体にあります。

具体的には、twitterで見かけたユーザーが「喧嘩してる」とか「なんなの」とか、もうちょっとヒネた人だと「ブロックした」とか書き込むわけです。そうすると、そのユーザーのフォロワーに「DEANとS7Gがなにかやっている」という情報が目に入ります。

結果的にギターメーカーが小競り合いしているという情報が半自動的にtwitterで拡散されていくという現象が発生し、これが多くの人の注意・認知を引く結果となります。
ここでのポイントは「メーカーの1次フォロワーであるユーザーが主体的に拡散することで、メーカー自身がストレートに宣伝しなくても認知が広がっていく」ことです。

SNSの拡散は見かける人の数が指数的に増大する性質を持つので、ここでとにかくどんなにしょうもなくても認知する人の数を増やすという手段を取ったのではないでしょうか。どんなに素晴らしい物を作っていても知られなければ意味が無いので、最初のステップは「認知」が重要視される傾向にあります。

少なくとも、シニカルな態度を取ろうがなんだろうがフォロワーに認知させた時点で貴方も立派な消費者です。もちろんこんな記事を書く私も。

商品の紹介しながら更に小競り合い→Search

最初のステップで認知を兎に角増やしました。これだけ確保できると「関心が能動的になって、検索する人」が出てきます。仮に1,000人見たとして、検索を試みる人が5%いたとしたら50人。これが次のSearch。

彼らは小競り合いの次に自社のギターの画像を貼るなどして喧嘩という体裁で商品の紹介をするという手段を取りました。SNSは視覚がモノを言うので見た目で勝負するのは有効ですね。

これが強力で、メタルギター→DEAN, S7Gという連想を「認知・関心」した消費者に行わせる効果があります。
で、ブランドサイトなりそれこそ黒幕であるデジマートで検索すると商品が見つかる、SNSを検索すれば評判が見つかるわけです。両メーカー共にエンドース契約や代理店の既存のマーケティングにより信頼やブランド力という資産が既にありますので、そこまで来たら購買者は近いでしょう。巧いです。

ESPでもCaparisonでもJacksonでもなくてDEANとS7Gがとにかく目立って消費者の頭のなかに強く残るように仕向ける、というのが「SNSで目立つ」ことの効果でしょう。

IGMP王者決定戦→Action、Share

さて、企画はまだまだ途中で、投票企画+販売フェアという購買に向けたアクションが残っています。

認知・注意→検索のフェーズでもそうでしたが、昨今のインターネットマーケティングのポイントは自分ゴト化にあります。これは販売フェアだけでは効果が薄いのです。島村楽器梅田ロフト店に行ける人しか当事者になれないのでは、せっかくの認知も発散してしまい効果が薄いです。

そこでインターネットを使った投票です。これを用いると自分がどっちに肩入れしたという当事者的な情報が付加され、より関心を強くすることができます(少なくとも、結果発表までは拘束することができますよね)。

また、ファンたちに自分の所持しているDEANやS7Gの画像をシェアする空気を作り、それをRTすることでさらなる相乗効果を狙います。

そして、結果発表までの拘束や小競り合いを中止させるなど、間をもたせている内に周辺機器メーカーのLine6やオーディオテクニカ、320DesignやY’S BOXも協賛し始めます。

協賛すると自分ゴト化が加速します。前半はメタルギターに関する認知であるためDEAN、S7Gの外に居る人は当事者ではなく、話題にくっつく(購買層になる)可能性はかなり低かったのですが、
周辺機器であれば他メーカーのギターを使っている人でも「あなたはどっち派?」という問いかけを行うことができますので、DEANやS7Gに無関係なより多くの人を巻き込むことができます。


また、たぶんエンドース契約を結んでいるバンドのメンバーにも声をかけている節がありますので、「バンドのファン」も巻き込む算段もあるように思えます(エンドース契約の本領は確かにそこですが)。

こういう、軸になるテーマ(今回だとメタルギター)を含む、「その内外に渡るあらゆる文化や関心のグループ」を「トライブ」と呼びます。より多くのトライブを、リーダー(この場合周辺機器メーカーの公式twitterアカウントとかバンドメンバー)を中心に巻き込んでいくという戦術が存在します。
「コアになる関心領域の外のトライブ」を巻き込むことで、本来顧客になり得なかった層を掘り出すという効果があります。

いきなり一気にやるのではなく時間をかけて認知を広げて、多くの人に行き渡ったタイミングで販売フェアを仕掛けるというところは非常に型にはまっていてわかりやすい例です。

最後の「共有」はまだまだこれから

このDEAN Guitars vs. Strictly 7 Guitarsの販売企画はまだまだ途中です。

他にどんな企業が参加してくるのか?
投票結果を受けてどんなアクションを取ってユーザーの関心を引くのか?
購買に向けて「実店舗に来い」以外のアプローチは無いのか?
などなど、デジマートの販売戦略というのは中々巧みですので、よーく観察するのが面白いと思います。


という具合に、SNSを使って「空気作り」を行っていくマーケティングは、通常のメーカーからプッシュ型でやってくる宣伝と比べて、大勢の人を購買層に転化させられるエネルギーが働くのです。
このような草の根活動的やり方は長期的に見ると確実な利益につながりますから、その場その場の宣伝よりもメリットがあるというわけですね。

同人作家、バンドマン、アーティストの戦い方に応用できる?

という具合に、マーケティングは「市場 + ing」の名の通り、市場それ自体(空気)を作り上げる行為を指します。

コンテンツの内容を工夫したり宣伝をばんばん打つのはセールスではありますがそれだけで空気を変えるエネルギーは生まれにくく、どうしてもSNS拡散(したくなるような状態)であったり街頭やネットで頻繁に見かける=流行っている、認知されているという「知らないとは言わせない雰囲気」の作り方が必要です。

そしてそれはそれだけで仕事が成り立つくらい高度で専門的な話なのですが、今回のしょうもない小競り合いを見る限りなんかハードル高くないかも、と思うのではないでしょうか。

「自分ゴト」とか「トライブ」とか「SNSマーケ」っていうわざとらしい単語を敢えて使いましたが、こんな風に地道に時間をかけて外堀を埋めるというのは考えれば誰でも出来ると思います。
例えば同人ならコンピレーション企画、バンドであればツーマンライブなどのように協働を用いた空気作りの機会というのは豊富に眠っているはずです。上手く活用してみてはいかがでしょう。

まとめ

久しぶりに5,000字も書いたのでちょっと読む方も疲れたかもしれません。
まとめると、DEANとS7Gの小競り合いからのメーカー巻き込み・販売フェアまでの流れは自分の作品の認知を広めるのにも応用できるわかり易い例であるといった感じでしょうか。

いや、中々一筋縄では行きませんし、これも多分デジマートが音頭を取ってかなり用意周到な計画が練られている印象があったので個人でやるとなかなか難しいかもしれません。
が、常々申し上げております通り何かに取り憑かれたみたいに定期tweet一辺倒に拘るより100倍意義があるように思えます。モノは試しです、いかがでしょう?

……ところで、Dean Guitarsの創業者が次々に作ったDEANの類似ブランドである「DBZ Guitars」と「Dean Zelinsky」をいっしょくたにするのはタブーでしょうか?
創業者プロデュースなのに10万円を切る価格でお手頃ですよ。
DEAN ZELINSKY ( ディーン・ゼリンスキー ) LAVOCE Z-GLIDE CUSTOM TRANS WINE | サウンドハウス
DEAN ZELINSKY ( ディーン・ゼリンスキー ) >LAVOCE Z-GLIDE CUSTOM TRANS WINE | サウンドハウス

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