ありんこ書房

今日から使える創作ノウハウ。時々エッセイ。ゴシックカルチャー。

どんなヘッドホンも5.1ch環境にする「Waves NX Head Tracker」インプレッション

   

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「おもしろいガジェット」枠です。Waves特有の魔法のプラグイン的な制作に役立つタイプというより、「とにかくすごい」という印象です。
御機嫌よう、蟻坂(@4risaka)です。

Wavesのスタートアッププロダクト

Wavesがちょっと前にクラウドファンディングサイト「Kickstarter」で以下のようなガジェットの出資を募っていました。

WAVES Nx – 3D AUDIO ON ANY HEADPHONES by Waves Audio — Kickstarter

簡単に説明しますと、「どんなヘッドホンでもこの装置を装着すると、頭の動きを読み取ってサラウンド環境みたいに聴かせる」という製品です。

考えてみればWavesってソフトウェア屋なので、こういう試みはありそうでなかった感じです。
なんだか面白かったので、確かそのとき勢いで投資した覚えがあります。

……で、その「NX Head Tracker」がこの度到着しましたので、大雑把に紹介と使ってみた感想を書いてみようと思います。
もともと存在しているスピーカーシミュレーションプラグイン「Waves NX」との差異も考えてご覧いただければ幸いです(ちなみにわたしはこっちは持ってません)。

NX Head Trackerを開封してみる

まずお約束のUnpackingから行きましょうか。

外箱はティッシュペーパーの箱を3分の1くらいにしたようなかわいらしい箱です。デザインには「Waves NX」のロゴ。
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開封しますと、以下の付属品が姿を表します。

  • NX Head Tracker本体(4cm×2cmくらいの小さくて軽い機械、厚みは1cm弱)
  • 単4電池1個
  • 説明書

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非常にシンプルな構成です。

この通り、NX Head Trackerは電池駆動になっています。Bluetoothで同期して無線でPCと連携します。
また、Wavesはイスラエルの会社(アメリカにも支社あったはずですが)のため、説明書は全て英語です。といっても図が豊富なので内容は平易ですが。
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NX Head Trackerの内容を説明してみる

この辺から真面目に説明していきましょう、といっても少し試した程度ですが。

ヘッドホンへの装着

Head Tracker本体は、「NX」と書いてあるロゴを前にして着けるように説明書に書いてあります。
また、ヘッドホンの頭に載っけるアーチの部分のてっぺん、中央に装着するように書いてあります。頭の上にちょこんと乗っかるようなニュアンスですね。

どれ、早速……と思った矢先、ある問題が発生しました。
はい、わたしの使っているメインのヘッドホンはオーディオテクニカのATH-ADシリーズであり、「ウイングサポート」と呼ばれる特殊形状のアーチが特徴です。

つまりどういうことかといいますと、普通のヘッドホンに存在するはずのヘッドバンドのアーチが存在しません
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さあどうする、いきなりWavesが想定していないユーザー第1号になってしまった気がするぞ、と思ったのですが、一応ウイングサポートの上部に細いアーチが2本通っています。
これに装着してみたところ、すんなり着けられました。特にズレたり落ちたりする心配もなく、非常に安定しています。さすが。
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というのも、Head Trackerの固定はアルファベットのHのような形をしたゴムであり、アーチの下から巻きつけるようにしてHead Trackerのクリップ部に固定する、という仕組みになっています。

ある程度アーチの形状や太さに依存しないように、「あらゆるヘッドホンに装着できる」設計になっているということですね。おみそれしました。

ソフトウェアのインストール

Kickstarter経由でWavesから進捗が届いていたのですが、途中で「ソフトウェアのβ版が出たよ」というアナウンスがあり、今回Head Tracker本体が届いたので使えるようになります。
ベータ版なので30日トライアルという制限ですが、そのうち正式版の権利が貰えるはずなので、とりあえずベータ版使ってみた感想を書きましょう。

インストールすると再起動を促されて、再起動をすると以下のようにサウンド出力に「NX Headphones」が追加されます。これで出力の5.1ch化を実現しているようです。
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で、肝心の「どんなヘッドホンでも5.1ch化」する仕組みは、

  • NX Head Trackerで傾き、変位を検知する
  • スピーカーの位置をバーチャルに設定し、その傾きに応じて「こんな風に聴こえる感」をシミュレートする
  • シミュレートした結果をヘッドホンから出力する

という、結構シンプルですが難しそうな処理です。本節で紹介するNXソフトウェアで、この辺の処理を行っています。Head Trackerは信号をソフトウェアに送る機械という位置づけです。

NXのソフトウェアを起動し、設定を行います。といっても、「カメラで検知するか」「NX Head Trackerで検知するか」の2種類。
もちろん今回はHead Trackerを選びます。言うまでもなく、センサーとBluetoothで高度に検知できる分カメラで測位するより遥かに高精度です。
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というわけで適当に音楽を鳴らして、頭を傾けてみます。
こちらが反らした状態。ソフトウェア上の頭が上を向いているのがわかると思います。
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逆にちょっとかがむとこんな感じ。
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で、このソフトウェア上の頭に反映されるスピードなんですがリアルタイムと言って問題ない程度に遅延がありません。音声ももちろんそれに追随して変化します。
なので、体感的には確かに5.1chだ!という聴こえ方を体感することができます。

ちなみに聴こえ方にプリセットが存在し、通常は「Multimedia」ですが、例えば「Movie Theater」を選択すると映画館みたいな厚みと広さを感じる聴こえ方に変化します。
これはどんなスピーカーを持ってても無理なやつなので、視聴環境のシミュレートとしては意味があるかもしれません。

使い勝手とかは?

はい、気になっていると思われます使い勝手などについて述べていきましょう。

機械とソフトウェア的な使い勝手

まず製品の完成度ですが、ハードウェアのNX Head Trackerはとっても軽くて「ヘッドホンに何か付け足して頭に乗ってる」という感覚は全くありません。これは素晴らしいことです。

あと気になるのは電池持ちですが、説明書には以下のような記述があります。

The device works with any standard AAA battery.providing approximately 40 hours of work.

だいたい40時間。とのことです。1日の作業時間を考えると思ったより持たないというのが率直なところです。
が、今は便利な時代ですので、単4電池くらいAmazonで充電可能なやつをたくさん用意しておけば何の問題もありませんね。

Bluetooth機器かつ単4電池1個で40時間ならば、まあまあ上出来なほうだと思います。
スイッチでオンオフ出来る他、使わないで放っておくとスリープモードに入るので、省電力機能についてもばっちり備えています。

ソフトウェアはデスクトップアプリケーションしか試してないですが、セッティングもシンプルでインストールしたらすぐ使えるので、特に迷うこともなく好印象です。
なによりレスポンスが凄まじく早いのがシミュレーターとして満たしてないといけない「リアルさ」に一役買っていると思います。

ちなみにソフトウェア、Android版が存在するので、真価はモバイルデバイスで使ったとき+VRデバイス、みたいな状況にあるのかもしれません。

聴こえ方

わたしの主観的な印象の話になりますが、聴こえ方です。えーと、結論を言ってしまうとマジで5.1chだ!というほどの感動はありませんでした。

いや、これ後ろを向いたり横を向いたりするとあ、5.1chだ!と思える程度に聴こえ方が変わって、すごく3D感があるといいますか、「横や後ろにあるスピーカーから音がなっている感じ」を体感することができます。
これについてはすごく良いと思います。新鮮な体験ができます。

で、今一歩かなーと思ったのは正面で聴いたときです。あんまりヘッドホンと変わんないかなぁという印象です。
正確には、NXソフトウェアを介して聴くと不思議な技術によって音場の広さがヘッドホンの限界を超えるので、とりあえず普通のヘッドホンでは絶対に聴くことができない「横の広がり」を体感することができます。これは凄いです。

というわけでスピーカーシミュレーションは十分に機能しています。が、どうもスピーカーの「前から聴こえる感」に乏しいという印象はありました。Lチャネルの音はしっかり左耳からだけ聴こえる、といいいますか。

いや、これ多分ヘッドホンによって感想が変わる気がしていて、わたしが試した環境はもともと最強に音場が広いと言われるオーディオテクニカのオープンタイプのモニターヘッドホンです。
これがDJ用とかミックス向けの密閉型ヘッドホンだと、また印象が変化するかもしれません。解像度その他の要素によって聴こえ方が変化するのは多分一緒でしょう。

先行して発売されているDTMプラグインのWaves NXと組み合わせたらまた別の化け方をするかもしれません。まだβ版なので、今後に期待です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。スピードインプレッションなので若干荒削りな記事ではありますが、印象としては以下のようにまとめます。

  • ハードウェアは完成度が高い。軽い
  • ソフトウェアや電池持ちについても特に大きな問題なく、簡単に5.1chっぽくなる。ソフトウェアのトラッキング速度は非常に早いです
  • 横や後ろを向いたときの音場の変化は非常にびっくりします。横や後ろから聴こえてくる感覚。
  • 音場がやたら広がります。
  • 肝心の正面からの聴こえ方が今一歩。もっと前から音が聞こえて、「スピーカーがそこにある感」が得られるのを期待してました

今のところ「ソフトウェアがβ版」っていうところがポイントだと思っています。Wavesといえば最強の信号処理プラグインで業界を席巻してきたメーカーです、今後さらなる改善を加えて驚きを与えてくれることでしょう、と期待しています。

そんなこんなで、ちょっと気になっている人の一助になれば幸いです。書き方を見ればわかりますが、Wavesだからといって「音楽制作に役立つ魔法のプラグイン」というわけではなく、「愉快なガジェット」としての位置づけの方が適切な感じです。

先行発売しているプラグイン版はネットでDL販売ですぐ買えます。

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