ありんこ書房

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ズルして線の細いボーカルやVOCALOIDに厚みやヌケの良さを付加できないか実験してみた

      2016/03/21

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「練習しろ!」は体育会系なので、
なんとかズルしてボーカルを聴かせる方向に持って行けないか考えてみました。
もちろん地のスキルが高いのが一番ですが、簡単には成し遂げられないじゃないですか。
というわけでまずはズルでも近道でもして結果を得るところから仮説検証です。
御機嫌よう、蟻坂(4risaka)です。

仮説

上手なボーカルは倍音成分が多いといわれています※。
倍音成分とは、例えばAの440Hzの場合、その2倍の880Hz……というように、ある音の倍の周波数の成分を指します。

倍音 – Wikipedia

ミドルボイスなどでいわゆる「通る声」を使いこなすひとは、
この倍音成分が多く、通る声が「通る理由」は、人間の耳に聞こえやすい1kHz以上の高い倍音が
例えば男性の低い声の中であっても、十分に多く含まれているからだと考えられます。

逆に、線の細い声、通らない声、あとVOCALOIDのヌケの悪さ
倍音成分の不足によるものだと考えられます。

従いまして、
人工的に倍音を付加できれば、スキルに自信のないボーカルさんのバックアップができるんじゃないか?
という仮説が立てられます。

実験してみましょう。

※出典:

実験

まずこのような音声があります。
残念ながら生声ではなくVOCALOIDです。

Vocal Experiment(before) by Arisaka on hearthis.at

簡単のため、音程はG一本でロングトーンです。
VOCALOIDはなんだか線が細いので、すこし中域に芯がほしいです。

倍音を付加することでなんとか解決できないでしょうか?
試してみましょう。

ズル1: サチュレーター/テープシミュ

テープシミュレーターというプラグインエフェクトがあります。
効果は、「昔のレコーディング環境のテープ録音による歪みの再現」(テープシミュレーション)です。
このテープシミュレーションの歪みにより倍音が付加され、
いわゆる「アナログ特有の温かさ」というものが再現されます。

テープシミュに限らず、コンソールエミュレーション系のコンプやEQは
挿すだけで実機の回路が再現されて倍音が増えるものもあります。

今回はNomad Factory MAGNETIC IIをセッティングしてみました。
やり過ぎるとあからさまに歪むので、ほどほどに高域に艶を加えるとちょうどよさそうです。
vocal-tips2

ちなみに、Cubaseの場合Magnetoという付属プラグインがこれに相当します。
MAGNETICは有料のプラグインですが、Acoustica Audioという高品質プラグインメーカーが
同様の機能を持つサチュレータープラグインを無料で出していますので、これで問題ないとおもいます。

ICON »【定番フリー・プラグイン】Acustica Audio「AcquaVox」 〜 世界的に高く評価されているプリアンプを再現したサチュレーター

というわけでアナログ系歪みによる倍音付加ができました。

ズル2: エキサイター

エキサイターは正確にはハーモニックエキサイターといいます。
倍音は英語でHarmonicsといいますので、その名の通り倍音成分を増やすプラグインエフェクトです。
やり過ぎると人工的というか不自然なサウンドになるので中々難しいプラグインだとおもいます。

今回はWaves Vitaminをセッティングしてみました。
wavesあんまり好きじゃないんですがエキサイターはこれが一番使いやすいので
vocal-tips1

VOCALOIDなので結構盛ってます
人間の声の場合はプリセットをベースにして高域成分を補強するのが良いとおもいます。

こちらは倍音を盛ってヌケを良くするのに使うということでおあつらえ向きのエフェクトとなっています。
例えばドラムなんかでも、スネアを前に出すのに使ったりします。
Vitaminはやっぱり有料プラグインなので、特にwavesはWUP商法がクドいし、以下のフリープラグイン等でいいとおもいます。

ICON » Final Cut Bodies、ダッキング機能を備えた強力なエキサイター・プラグイン、「La Petite Excite」を無償配布中!

というわけで、MAGNETICに続きダメ押しの倍音付加ができました。

実験結果

というわけで、テープシミュレーターとエキサイターを挿した結果が以下の音源です。

Vocal Experiment(after) by Arisaka on hearthis.at

……?

beforeをもう1回。

Vocal Experiment(before) by Arisaka on hearthis.at

……あれ、あんまり変わんなくねーですか?

一応、変わっています

理論上変化しますし、実際編集時は確かに差がありました。
具体的には中低域に厚みが出たほか、若干ヌケの良さが出ました。

というわけで、エフェクトをかける前と後のアナライザーを御覧ください。
(左がbefore、右がafter。クリック/タップで拡大)
vocal-tips3
おわかりいただけだだろうか
まったく同じ、Gの「あ〜〜〜」という音源でも、矢印に示したあたりの周波数成分が増えているのがわかります。

というわけで僅差ですが、編集時(24bit/96kHz)の段階では
周波数成分上も聴感上も有意に差が見られます。
したがって、テープシミュやエキサイターを駆使すると倍音を増やして厚みのあるサウンドを作り出すズル技は一応有効でした

あんまり変わってない疑惑に関する考察

そうはいいましても、実際大して変わんなく聞こえたとおもいます。
これの原因なのですが、hearthis.atにアップロードしたのがmp3音源だからという可能性が高いです。
盛った情報が圧縮されてどっか行っちゃったようです。

……ということは、
Youtubeやニコニコ動画、SoundCloudのような圧縮などの要因で音質が変化/劣化する場所ではあまり意味を成さない可能性が高いです
最近のインターネットで音楽を公開する場合メインのサービスなので、これは困りました。
うーん、やっぱりしっかり練習しろってことなんでしょうかねえ。

一方で、音質の劣化がない制作したまんまの音源が収録される
配信サービスやCDによる販売では、この効果を享受することができますので、
必要に応じて有効に使っていけば良いとおもいます。

以上、効果はあるけど魔法ではないよ!という結論でした。

まとめ

以上、線の細いボーカルを科学の力でなんとかする実験でした。
お聞きいただきました通り効果が低いor検討の余地がある結果となりましたが、
VOCALOIDでやったからというのもあるのかもしれません。

一応数値上、編集段階ではポジティブな変化が見られるのは確認できましたので、
どこかのタイミングで生声で実験できたらなーっておもっております。

蟻坂は自分の声が嫌いなのでセルフ実験台はしません。あしからず。

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