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今更訊けないボーカルメロディーの基本的な4つのタブー

      2016/03/20

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同人音楽やVOCALOIDの台頭により、ウタモノが簡単に作れる世の中ですが、
「やっちゃいけない基本ルール」みたいなのがあります。
今更なんですが自戒を兼ねてまとめてみました。御機嫌よう、蟻坂(4risaka)です。

インストとウタモノの違い

インスト(歌メロが無い音楽)とウタモノの違いってなんでしょうか。

そうです、メロディを取るのが人間の声なんです(当たり前)。

……が、メロディを取るのが人間という楽器に変化することで
他の楽器では到底考えられないような制限がいくらか生まれます。

必ず守れ!というわけではありませんが、
以下に述べる行為は「やっちゃいけないこと」として知られているので
頭の片隅に置いておいて良いでしょう。

ボーカルメロディー基本的な4つのタブー

パッセージが早すぎ

melo_taboo1
パッセージというのはメロディの細かさです。
早口言葉のように刻み込むような細かいメロディを組むと

  • リズムが取りづらい
  • 一音一音の発音がはっきり出ない

というような弊害が発生します。

これは人間が口を動かして歌詞を述べる構造上仕方がありません。
少し愉快に聴こえるのでつい使いたくなりますが、
一音一音をはっきり出しながら歌うなんてプロでも難しいでしょうから、
そこんとこ配慮してあげましょうね。

ロングトーンが美しいひとにこれをやらせると個性を殺してしまいます。
よく考えてメロディを組みましょうね。

大きなインターバルで跳びはねるメロディ

melo_taboo2
これ、声以外の楽器、特にピアノやギターだと全く困らないので
その感覚でメロディを組んでしまってやらかしてしまうのですが、
音と音のインターバルが大きいと音程がつかみにくいのです。

単純に難易度が高くなるので、
よほど表現上の理由がない限りはやはり歌い手の方に配慮してあげるべきです。
仮に「ボーカリストの技術力不足だ」とかいうならただの横暴です。

逆に、鍵盤でいう「隣の音」に順番に遷移する分には比較的簡単ですし、
同じ音を繰り返すならもっと簡単です。
一方で地味になりがちなので、抑揚のバランスが難しいところです。

息継ぎがない

melo_taboo3
こちらもインスト上がりだとやらかしがちなミスです。
人間は生き物なので、声を発するのに息を使います。
したがいまして、長い間歌わせ続けるとどんなボーカリストも息切れを起こします

というわけで、適宜休符を入れて休憩するタイミングを用意してあげましょうね。
こちらも「肺活量不足だ」とかいうなら鬼畜性です。

なにより、充分に息を込められないと音圧が出ないので
ボーカリストのポテンシャルを殺してしまう可能性が高いのです。
やめましょう。

音域が広すぎ

melo_taboo4
一般に、素人なら綺麗に1オクターブの音程が取れたら十分上手です。
3オクターブ出るといいつつピッチがズレ出すとかかすれて音圧がないとか
そんな状態だったら狭い音域を有効活用していい声を響かせるほうが絶対に良いです。

陥りがちなのが、「サビで音域を上げてキャッチーにする」というワザを実施しようとして
AメロやBメロと乖離することです。歌うのが一人の人間の場合、結構ツラいです。

コンポーザー視点ですと、サビなんかでキャッチーにしたいがために
無闇矢鱈に2オクターブとか使っちゃったらアウトです。
制約の中で聴かせられるように作れたらかっこいいです。
というわたしも修練中ですが。

一方でタブーを犯す例

といいつつも、世の中にはタブーに突撃したパターンがいくつもあります。

VOCALOID

最たる例がVOCALOIDでしょう。
理由は言うまでもなく、ボーカルが人間ではないからです。
どんなに跳ねるメロディを組んでもしっかり音程を取りますし、
早口言葉も正確に喋ります。ブレスなんて無くても延々と歌います。
製品に実装されている範囲であればとんでもない音域でも出ます。

可能性がいくらでもあるので好き放題できるのはVOCALOIDの愉しいところです。
cosMoさんの「初音ミクの消失」は有名ですね。

モーツァルト

オペラ「魔笛」第二幕で歌われる曲をご存知でしょうか。

復讐の炎は地獄のように我が心に燃え – Wikipedia

リンク先で音声が聴けます。
デタラメに高いです。いわゆる超絶技巧です。
普通はこんなトンデモ音域、飛び跳ね方のメロディを音程込みでコントロールできません。

そもそもこの曲はコロラトゥーラ・ソプラノの能力のために作られた曲のようで、
そういう意味ではしっかり「ボーカルに寄り添った曲」であるといえます。

両者ともかっこいいですね。
結果が得られればこういう選択も十分にアリということを、実績をもって知らしめてくれます。

時と場合でタブーを犯すのも良いという話

音楽は自由なので、タブーといわれるからと行って必ず守らなければならないわけではありません
先の例外のように機転を利かせたり、
或いは近くにいらっしゃるボーカリストさんがスーパーボーカルだったりしたら全く問題ないでしょう。

これらのタブーは「むかしのはなし」なので、
早口だったり跳ねたりすることで歌メロに意外性が生まれ、新たな個性になる可能性だってあります。

デジタル録音時代だから、タブーを積極的に無視できる

個人的な考えをもっと述べますと、実はタブーなんて無視できます
息継ぎができないなら多重録音すればいいし、
音が跳ねて安定しないなら補正すればある程度はなんとかなります。

出来上がった結果についてはいくらでも調整が利くのです。
もちろんライブでどうなっても責任取れませんが。

となると、重要なのはその過程ではないかとおもいます。
というのは、コンポーザーの目的はボーカルいじめではないので、
しっかりと相手の個性を引き出せる、相手の技術を活かせる作り方をすべきであって、
仮にも協同作業なのに敢えてそれをしないというのはやっぱり乱暴なんじゃないかとおもうわけです。

文字通り相手の声に耳を傾けて、
お互いにお互いを尊重することで力を最大限に発揮できたら最高にかっこいいですね。

まとめ

というわけで、原則として以下の様な歌メロは困難過ぎるのでやめたほうがいいという話でした。

  • パッセージが早すぎ
  • メロディのインターバルが広すぎ
  • 息継ぎができない
  • 音域が広すぎ

一方で、ボーカルの魅力を引き出せるならば積極的に壊してもいいという話でした。

なお、メロディを綺麗に組めても、歌詞がおかしいとやっぱり難しい曲になってしまうので
以下の記事なんかも参考にして、歌いやすいメロディと歌詞を考えてみましょう。
今更訊けない歌メロの歌詞を書くときの基本的な2つのタブー

また、本記事で紹介したことの逆を行けば概ね歌いやすい曲になります。
アイドルソングとか童謡がその最たる例です。

ただし、J-POPは一見歌いやすさ重視に思えますが、ボーカリストさんが粒ぞろいのため
簡単そうに聴こえるだけで実はキーがやたら高いとかして難しい物が多い印象です。

結局のところ、正解は自分で考えて見つけるしかないってことですね。

 - ボーカル, 創作