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サウンドハウスの「最強イコライジングマニュアル」がミックスの指針に便利かも

      2016/08/31

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具体的な数値ガイドが載っているタイプのEQ資料の紹介です。
御機嫌よう、蟻坂(@4risaka)です。

ミックスのEQは「トラックによる」のが正解

身もふたもないことをいうとミックスにおけるEQ処理は見出しの通りで、その人の作っている曲によって最適なEQが異なります。

……が、その最適なEQのための指針すら明かされていないという状況下で、初心者の人がミックスを進めていくにはどうしたらいいのでしょうか。
一応、弊ブログでは「これくらいはどんなトラックにやっても間違いないと思う」という基礎だけ示しています。
(参照: 初心者DTMerのための、今さら訊けない基本的なEQカーブの書き方)

が、これに加えてボーカルだったらどこをブーストすれば良いとか、管楽器みたいな音色の場合どうするのが美味しいかとか、エンジニアの方は直感的に判断できますが我々はそうもいかないというのが現状です。まだまだ情報が足りません。

ということで、「よく知られている設定」をとりあえずインプットして、実際に試して試行錯誤するための指針がどこかにもっとあれば良いんじゃないかと思います。

そんな資料を探していたところ、そのものズバリみたいなEQ資料を見つけたので紹介します。

サウンドハウスの「最強イコライジングマニュアル」

なんとサウンドハウスがその資料を公開しています。無料のPDFです。

最強イコライジングマニュアル | サウンドハウス

内容としては「EQの目的」といった基本的な説明とかEQの種類に始まり、ここが最大のポイントなんですがメジャーな音色に応じたEQの具体的なポイントをある程度網羅しています。
「右も左もわからない!」という方がまず試してみるための指針としては最適な内容でしょう。

で、結構文字が多くて14ページあり、個別に読み込むのも大変だと思いますので、弊ブログで簡単に内容を紹介してみましょう。

ドラムのEQ

語り尽くされた感のあるドラムのEQですが、細かく説明がなされています。

キックについては3種類、「80年代風」「クラシックロック」「もっとも浅め」について述べてあります。たとえばクラシックロックの設定であれば

  • 120〜240Hzを4dBもしくはそれ以上ブースト
  • 1.5kHz以上を絞る
  • ドラムによっては80Hzを1〜2dBカットし、60dBを2〜3dBブースト

というように設定が示されています。ね、具体的でしょう。

個人的にはなんか随分アグレッシブな設定してない?と若干違和感があるのですが、とりあえず参考資料としては上々だと思います。

スネアであればバラード向け設定やそれ以外のタイト系の設定、またオーバーヘッドやドラムチャンネルの設定についても指針が示されています。注意点ですがなぜかハイハットやタムの設定が具体的に書いてありません。これについては別途資料が必要かもしれませんね。

ピアノのEQ

章立てになっていますがピアノについてはシンプルな記述で抑えられています。

例としては2種類、「ピアノがメインの場合」と「バンド編成にピアノが居る場合」。多くの場合後者じゃないかなと思いますが、非常に具体的に書いてあります。

  • キックやベースの妨げになる140Hz以下をカット
  • 3〜4kHzの中域をちょっと抑える
  • 8kHz周辺を少しブーストして高音を引き出す

ピアノって単独で非常に帯域幅が広い楽器なのでEQが奥深いです。アンサンブルによって全く様変わりしますが、低域の衝突を抑えるのはどんな編成でも非常に重要ですので、覚えておくと良いでしょう。

ベースのEQ

なんかえらい具体的に書きすぎてる気もしますが、指弾きの場合のエレキベースについて異様に細かく述べられています。

  • 100Hz以下をカット
  • スラップの高域やファンキーさが欲しい場合、2kHz辺りを4〜6dBブースト
  • グラフィックEQを使う

一応勝手に注釈ですが、この通りにするのが正解ではないので気をつけて下さい。個人的にはやっぱりブーストの数値がアグレッシブ過ぎる気がしています。

外科手術みたいにブースト・カットしまくるのは目的を見失っていて、本来フェーダーワークだけでどうしても制御出来ないところを回避する術としてEQがあります。「なるべく操作しない」のがスマートなんじゃないかなとわたしは思います(覚えること少ないと楽ですし)。

ちなみにエレキベースの場合コンパクトEQなど「音作りとしてのEQ」が存在します。この章の設定例はミックスのメイキングというより音作りのそれに近い印象があります。であれば、それはそれでご機嫌な音色ができれば良いと思います。

ちなみにウッドベースおよびコントラバスについては明記がありません。ただ低域の処理は似たようなもんですので「100Hz以下」を道標にすると良いでしょう。

ギターのEQ

ギターはエレキギターとアコースティックギターの2種類について書いてあります。

【エレキギター】

  • ベースに支障をきたさない程度に160Hzを3dBブーストすると、ローエンドを上げられる
  • ハイエンドは例えば7kHzを6dBブーストすると固い音が生まれる
  • ミックスする場合、ギターがリード+2本ならば、200Hz以下と9kHz以上をカット
  • 4kHz周辺をブーストして6kHz辺りをカット

【アコースティックギター】

  • アンサンブルに混ぜるなら90Hz以下をカット、360Hz周辺を少し加える
  • 2kHz, 7.1kHz周辺をかなりブースト
  • シンプルなボーカル・パーカッション・ギターの編成の場合、166Hzで3.4dBブーストして音を引き出す

んんん、やっぱりブーストのときのdB値がやたらアグレッシブ(9dBとか書いてありますが流石にやりすぎじゃ?)なので、そこだけ鵜呑みにしないほうが良さそうです。トラックメイキング向けEQとミックス向けEQではやり方が違うのですが、これは前者のそれと思われます。

とはいえわたしそんなに改造したこと無いんですが、みなさんいかがでしょう。6dB~10dBレベルのブーストってやります?

ボーカルのEQ

ボーカルはリードボーカルとバックボーカルの2種類について記述があります。男性ボーカルと女性ボーカルではEQが異なるのは基本ですが、そこもしっかり抑えられています。
リードボーカルのEQについて紹介してみましょう。

  • 女性ボーカルでは8.8kHzで3dBをシェルビングでカットすることに大して、男性ボーカルでは1dBブーストすることもある
  • 男性では7.5kHzで2dBブースト、5.1kHzで5dBカットすることもある
  • 女性では733Hzと283Hzで4dBブーストしたりする

数値が異様に具体的ですが、これ本質的には倍音成分とか口腔/鼻腔共鳴の周波数帯域を示していたりするパターンと思われます。他の楽器と比べるとアグレッシブさはなりをひそめてますが、それでも数値的には大きめの印象です。

ボーカルトラックの場合、特に男性の場合ベースと衝突する低域の処理が難しかったりします。女性ボーカルは割とやりやすいのですが……。

不要な音を取り除く

最後に「不要な音を取り除く」という章があり、ハムノイズとかその他ノイズについてEQで回避する方法が述べられています。

……が、個人的見解としてそれはレコーディングに失敗しているので録り直せというのが正解だと思います。また打ち込みメインの場合原理的に発生しませんので特に気にしなくて良いかと思います。

要するに初心者的にも中級者的にもこの章は特に読まなくても問題ありません。変な音は録音が原因です。またノイズリダクションは専用のツールがありますので、EQで回避するのにこだわる必要はありません。

おわりに

ちょっとだらだら書いてしまいましたが、サウンドハウスの提供するEQ資料の紹介でした。

「右も左も分からない初心者が指針の一つとする」に当たって良い感じのものだと思います。が、重ね重ね言ってますが鵜呑みにするのは非常に危ないです。特にブーストの設定値が妙に大きいので、トラックメイキング向けにしても作りすぎ感はあります。

一方で周波数帯域の値については参考にできると思いますので、とりあえず削ったり盛ったりする用事ができたときにどこをどうすればいいのか迷った時の資料とすれば良いのではないでしょうか。

最強イコライジングマニュアル | サウンドハウス

書籍だと、傾向としては「EQレシピ」に似ていますね。これも設定そのものが書いてあるので「参考として」使えます。最後に頼りになるのは己の耳で、アンサンブルによって最適なEQは違うという点は忘れないようにしてください。

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