ありんこ書房

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石田ごうき著「音圧アップのためのDTMミキシング入門講座!」は、ミックス初心者のためにある本でした。

      2017/08/01

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ごきげんよう、蟻坂(4risaka)です。
今日はAmazonで多数の高評価にも関わらずtwitterで不気味なくらいシェアされないおすすめミックス本があるので紹介しちゃいます。
石田ごうき氏著「音圧アップのためのDTMミキシング入門講座!」という本です。
結論を申し上げますと、右も左も分からないミキシング初心者はこれ1冊あれば大丈夫です。

「音圧アップのための」とあるが、ミキシングの基本的知識をまとめてあります

mix2_mini
音圧といえば「音を大きくする本」が有名ですが、
あれとは異なり、明確に「良いミックス」の解答を最初に示したあとで、
それを目標として、いかにしてたどり着くかを一から丁寧に解説されています。

ちなみに良いミックスとは、低音と高音がほどほどに伸びている「M型ドンシャリ」を差すそうです。

ドンシャリといえば下端と上端が伸びている「U型」を連想しますが、
非可聴域が伸びてても音圧は出ないよ、という主旨で、この「M型」を目指すのが本書の当面の目標になります。

めざせM型どんしゃり

アナライザーで見るとちょうどこんなようなの。めざせM型どんしゃり

本書を用いた勉強の仕方ですが、付属のDVD-ROMにリファレンス用の音源パラデータが収録されており、
章ごとに教材としてパラデータを実際にDAWに読み込み、操作をして、
フェーダーやEQの何を動かすとどう変化するのか、を体験的に学習できるものとなっております。

「習うより慣れろ」はミックスのような実践が頼りな内容だとかなり強く作用してくるのですが、
教材のデータを利用することに寄って見事にカバーしています。
これは他のミックス学習本にはありそうでなかった特徴であると思います。

前半は、フェーダーワークから

前半は、EQやコンプが予めかけられた音源を使って、
「ボリュームフェーダー」だけを操作して音量のバランスを整える勉強をします。

こちらも目からウロコなのですが、
この種類の楽器はこのくらいの音量バランスでという具体的な情報が、
そのものズバリ図解されています。
バンドサウンドはもちろん、ストリングス系のウワモノ、コンガなどの打楽器についても
「スネアと同じくらい」とか「バスドラムの90%くらい」という非常に具体的な解説が為されています。
実際、この通りにまとめると綺麗な「M型ドンシャリ」をあっさり得ることが出来て、感動します。

序盤の例:

まずバスドラムを-10dBに合わせて、
スネアはその95%くらいの音量に聴こえるようにボリュームフェーダーをあわせる

中盤は、EQ

同じく非常に具体的に「この楽器ならばこういうEQが定石」というのが書かれています。
もちろんオケによって最適なEQは全く異なるので一概には言えませんが、
バンドサウンドの場合概ね間違いのない設定ができるようになっています。

更に、周波数帯域ごとの最適なEQ(シェルビング、ハイカット等)と
突くとオイシイ帯域、邪魔な帯域を事細かに解説されていますので、
今後実践で応用していくにあたって十分なデータがあります。

この章でも同様にEQをかけていない状態の教材データについて
実際にお手元のDAWでEQを試すことで効果を確認しながら勉強できますので、
ご自分の曲で実践する際にこの経験が生きてくるかとおもいます。

更にこの章、
最後に「各帯域にどういう楽器のどういう成分が位置していて、
ブースト/カットするとどのような効果が得られるか」が
1枚の図に綺麗にまとまっています。
教則のほか、このようなページがリファレンス的にも十分使用価値があるとおもいます。

中盤の例:

6kHz〜7kHzは弦がフレットと接触する部分なので、
ベースをメタルっぽい感じにしたいならばピーキングEQでほんのちょっとブーストする

EQの次は、コンプ

コンプの章では、コンプの根本的な使い方から説明されています。
EQは特定の周波数を減らしたり増やしたりする直感的な装置であるのですが、
「コンプはアタックやらリリースやら、直感的じゃなくてよくわからない」という
初心者が陥りがちなポイントをがっちり抑えて下さっています。
アタックタイムをどうするとどういう音になる、というのも図を豊富に用いてわかりやすく解説されています。

この章は、前半でひたすらコンプの機能を丁寧に説明したあと
例によってコンプがかかっていない状態の教材データを使ってコンプの練習をしていく流れになります。

こちらもなんと、「この楽器はレシオx:1で」など
トラックごとの定石設定がまとめられており、初心者の「どこから手を付けていいかわからない」
というポイントに一旦着地点を与えてくれます。

もちろんパラメータ設定自体は本質ではないので、ここから応用する力は個々人に依存しますが、
一旦基本を抑えれば、そこから応用してどんどん上達していく足がかりにできますので、
なんでもいいからリファレンスをくれるというのは非常に大切だとおもいます。

コンプの章の例:

音が前面に出てくるバスドラム、ベースやエレキから優先して細かい設定を覚えていくとよい

終盤は、ボーカル向け処理とグルーヴ感の処理

ボーカルは、あらゆる楽器の中でもダイナミクスが大きかったり
ひとによって倍音成分が全く異なったりと癖の強いものです。
そのため、最後にボーカル向け処理が書いてあるのは非常にありがたいものだとおもいます。

実際、ボーカルをスペアナに通した時の倍音の話についてまず説明されています。
その上で、ダイナミクス差を減らすための工夫について説明されています。
ミックスに慣れたひとであれば常識である「ボーカルには光学式コンプ」という話も扱われています。

最後のグルーヴコントロールの章は、これまでと比較すると少なめの内容です。
「この章は、これまでの章で扱われていなかったが、初心者が知りたい箇所」を
見事に絞ってツボをついてきた、といったところです。
具体的には

  • ボリュームオートーメーションの使い方
  • サイドチェインコンプの使い方
  • 「タイトな音」とか「ファットな音」という表現の音質(周波数帯域)上の説明

について、これまた図をたくさんたくさん使って非常にわかりやすく書いてあります。

まとめ

ひとことでいえばミックスはどういう手順で何をするのか理解できるようになる本です。
インターネットには情報があふれていますが、適切な検索の仕方を知らない、あるいは
頼る人が居ない、居ても質問をどうすればいいのかわからない、といった
「右も左も分からない」故に上達できないという悩みがあるとおもいます。

いきなりEQだコンプだボリュームオートーメーションだ云われても、
まず目的がはっきりしないので混乱してしまいますよね。

この本は、例えば低音楽器はハイパスで超低音を削るとか、ディエッサーでボーカルの歯擦音を削るとか、
「ミックスをちょっと知ったひとなら絶対知ってる基本」を1から全て丁寧に解説されているのが特徴です。
あまりにも当たり前すぎて中々どこにも書いていない・訊きにくい内容が1冊にまとまっているので、
「ミックスは何をすれば良いのか」というごく初歩的なことを覚えて最初の一歩を踏み出すのに相応しい本だとおもいます。

また、この本で得られた知識と併せて、ミックスに使うツールのプリセットを活用することで
本に載っていない楽器のEQやコンプの設定も覚えることができるでしょう。
個人的にはiZotope Alloy 2のプリセットがおすすめです。
iZotope Alloy 2の豊富なプリセットを利用してミックスを覚える

というわけで、ミックス超初心者!という自覚がある方におすすめの名著です。

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