ありんこ書房

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WaveDNA「Liquid Music」は、半端なコンポーザーを一掃しそうなチートプラグインだ

      2016/07/01

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最初に広告を見た時に衝撃を受けたのでシェアしてしまいます。
御機嫌よう、蟻坂(@4risaka)です。

WaveDNA Liquid Music

なにはなくともこちらの動画を御覧ください。

前半2〜3分だけで十分です。
Sylenth1で設定されたパッドのプリセットを、「Liquid Music」という謎のプラグインを使って演奏する動画なのですが……。

なんとLiquid Music組み込みのピアノロールを適当になぞったらそれっぽいコード進行が出来てしまっています。もうこの時点で既におかしいです。動画の後半ではダメ押しと言わんばかりに、コンフィグから色々弄ってボイシングを変えたり、ノート長さを弄ったりしています。

つまり何ができるかと言うと、なーんにもわかんなくても音色さえ用意できれば伴奏くらいなら即刻仕上げられるのです。もうめちゃくちゃです。

ついでにこちらの動画も御覧ください。

コードだけではなくメロディのようなものも作り込めるらしいです。
うーん、これは「単純なデモ曲とかBGMに使える作品を下さい」みたいなお題の場合その辺のコンポーザー頼るより手っ取り早いかもしれませんよ。

WaveDNAの他のプラグイン

実はこの「Liquid Music」を出しているWaveDNAという会社、今に始まった話ではなくなんだか凄いプラグインを他にも出しています。

Liquid Rhythm

こちらはリズムトラックを瞬時につくり上げるプラグインであるLiquid Rhythm。

多ジャンルに渡ってユニークなドラムトラックを簡単に作り上げられるのが特徴です。

ただ、このくらいだったら「まぁステップシーケンサーなら実現できるレベルかなぁ」という程度ですよね。サンプルの質や量だったらNative InstrumentsのBattery辺りのほうが強いでしょうし。
これは結構前に出たプラグインなのですが、個人的には「その程度」だったのでノーマークでした。


ところが今回出ましたLiquid Music、曲が作れるので今までとは全く話が違います。中庸なDTMerをみんな駆逐してしまえる代物です。これがテクノロジーの進化なんですねぇ。凄い。

クリエイターが考えないといけない視野

というわけで、単純な伴奏や適当なメロディならこういうプラグインを使えば作れちゃうので、クリエイターの存在意義が揺らぐと心配するかもしれません。
実際、凡庸な曲しか作れない場合アイデンティティを破壊できる代物だと思います。さあ、どうしましょう。

……とは言いますが、薄々気付いていらっしゃるかと思いますが、Liquid Musicが組み上げる音楽はなんだか面白く無いんですよ。わかりますかね。パズルのように組み上げたコードやリズム、メロディに表現上の文脈が一切入り込まないからではないかとわたしは考えるのですが、どうでしょう。

文脈を入れ込むのが人間の仕事

美術の世界では村上隆さんが著書で仰っていましたが、やはり表現物には文脈が必要です(関連: 【 芸術だってビジネスセンスが必要。村上隆「芸術起業論」を読みました 】)。Liquid Musicの作り上げた曲は極めて無機質になりそうな気がしています。

なので、バンドにしろ劇伴作曲家にしろトラックメイカーにしろ、何らかの表現を入れ込むという面においてLiquid Musicが現状取り付く島は存在しません。故にアートの文脈では取るに足らないプラグインであると思います。

逆に、成果物の目標が普遍的になっている場合は気をつけたほうが良さそうです。「〜っぽいサウンド」とか「BGM風」とか、形式が定まっているものです。プラグインでがーっと書いても似たようなものが仕上がる可能性が高いです。

基礎技術の範囲ではもっと凄いのができている現実

このような「適当に組み上げる」という話であるとディープラーニングが圧倒的な成果をあげています

例えば美術の分野では「レンブラントの新作」と題される何か。
機械学習したAIがレンブラントの”新作”を出力。絵具の隆起も3D再現した「The Next Rembrandt」公開 | Engadget 日本版

音楽だって既にあります。ジャズっぽい何か。
deepjazz: deep learning for jazz

しかし、いずれにおいても美術史上の文脈であったり音楽的な意味の付与が決定的に欠落しています
これはクリエイターが「個性」ないし「表現」と称するものそのものであり、本来創作の本質に当たる部分じゃないかと思います。それが無いので工業製品としては上々ですが芸術にはなりえません

ということを心に留めておくと、こういうスーパーチートプラグインが今後どんどん出てきても、何も怖いことはありませんね。
一方でBGM集みたいな製品としての側面が強いものはアーティストがやらなくていい仕事になりそうなので、舵取りを考えないといけないかもしれませんね。

まとめ

すごいプラグインを見つけたのでテクノロジーの進化と合わせてちょっと大げさな記事に仕立てあげてみました。アートの文脈で創作をされる方からしたら特に突拍子のある話でもないと思います。

ただ、とりあえずなんか簡単に作れるならそういうので仕上げられるモノはもう自分らがやらなくていいんじゃないかなーというのはちょっと思いました。
テクノロジーは職人芸を解体して誰でもできるようにそのハードルを極端に下げる傾向にあります。人工知能に至っては全自動で勝手に作ります。「そのレベル」に甘んじてしまうと多分Liquid Music以下の存在になってしまうことでしょう。

でも便利は便利なので、創作の場面においても、「自分がやる必要のないこと」はこういうチートプラグインとか使ってさくさく省略できるようになると良いですね。

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