KOMPLETE KONTROL Sは何故チートMIDIキーボードなのか
2017/09/08

状況は限られるのと高いのとニッチなのを差し置いて個人的にもう手放せない機材のひとつです。
御機嫌よう、蟻坂(@4risaka)です。
MIDIキーボードの話は過去に何度かやっていますが、わたしが現在つかっているMIDIキーボードはNative InstrumentsのKOMPLETE KONTROL Sです。超高かったです。下取りとポイントが無かったら深い傷を負うところでした。
Native Instruments ( ネイティブインストゥルメンツ ) KOMPLETE KONTROL S61 | サウンドハウス
おかしいなぁ7万円以上したはずなんですが今みたら68,000円 – 6,800ポイントになってる……
この機材、まぁその通りただの入力装置にしては高いんですよ。しかし、わたしはNative Instrumentsに魂売ってるくらい依存しているのに加え、数々のチート機能の魅力に抗えなかったので現在に至っております。
ただじゃ済ませたくないので読者の皆様も沼に引きずり込んでみることにします。
目次
KOMPLETE KONTROL Sはここがチート
他のMIDIキーボードと異なりソフトウェアとリンクした数々の便利機能が内蔵されています。
以下の「KOMPLETE KONTROL」というソフトウェア(KONTAKTのシングルティンバー版みたいなの)を組み合わせて、それが挿入されたトラックをKOMPLETE KONTROL Sが認識することで、様々な便利機能を実現することができます。
スケール、キースイッチのガイド表示
まず鍵盤上にスケールを表示できます。別の記事でも書いたことがあるのですが改めて説明しますと、コントロールパネルからスケールを設定しますと……
こんな具合に対応したスケールの鍵盤だけが光るのでスケールから外れないで音を鳴らせるようになります。スケールは何回も制作しているとそのうち暗記するのですが、あんまり使わないものだといちいち導出するのも生産性が落ちるので、この機能は非常に強力です。
またKONTAKT音源といえば大量のキースイッチで混乱するという問題がありますが、KOMPLETE KONTROL Sは現在選択中のトラックのキースイッチを鍵盤上に表示してくれるので、絶対に迷うことがなくなります。もちろんどのスイッチが何に対応しているのかは知っておく必要がありますが。
コード入力補助
スケールの補助ができるように、設定するとコードの補助もできます。具体的には指一本でコードを弾けます。
設定の詳細は本題からそれるので省略しますが、設定するとルート音を押さえただけでトライアドとかセブンスが鳴る状態にできます。バッキングの入力はこれでさくさくできますね。DAWからあとでヒューマナイズかければきっちりすぎる問題も解消できるかと思います。
これとCubaseのコードトラックを組み合わせると、暗記なしで構成音を即刻引っ張ってこれるスーパーコードチート(謎)が可能になります。
もちろん依存しすぎると形骸化していくので、オリジナリティのためには自分で考えて組み立てないといけないのは留意しておく必要がありますが。あと進行は流石に作ってくれませんし、そこは個性を出す所ですし。
プリセットの瞬時切り替え
KOMPLETEの大量の音源を取り扱う時、詳しくないシンセ音源なんかだとプリセットを使うことがあるかと思いますが、このとき困るのがプリセットもシンセ音源自体も種類多すぎて渡り歩くの大変という問題。これを解消してくれます。
KOMPLETE KONTROL(ソフトウェア)はKONTAKTやBatteryと違い全てのKOMPLETE系音源をシームレスに取り扱うことができます。つまり、「KOMPLETE CONTROL上にMassive、KONTAKT、Battery、FM8、Absynthを区分け無く読み込める」わけです。
このシームレスに扱える機能だけでも非常に強力なのですが、KOMPLETE KONTROL Sのフィジコン部を組み合わせるとより生産性を上げることができます。
コントローラーにこんな部分があるのですが、これでKOMPLETE KONTROL(ソフトウェア)のライブラリの読み出し操作ができます。
特に奥にある矢印を押すとワンタッチでプリセットが次のやつに切り替わるので、「あー選んだけどこれなんか違うな」と思ったときにポチポチ次々と試すことができ、非常に効率よく操作できます。
その他基本的な便利機能
他にもいろんな機能がありますが、基本的に61鍵のそこそこのMIDIキーボードに搭載されている機能ですので、適当におさらいします。
- トランスポートパネル(Cubase)のコントロール
他のDAWでもできると思いますが、Cubaseの場合KOMPLETE KONTROL Sに搭載されているこのパネルから録音、再生、停止、シークバーの左右移動ができます。マウスに持ち替えてがちゃがちゃやらなくても移動できるので地味に効率的です。
- Fatar高級鍵盤
これは公式でも売りにしているのですが、鍵盤のタッチが上質……らしいです。わたしは比較対象がないのでなんとも言えませんが、フラッグシップシンセと較べてみると分かるものなのでしょうか?(なんだか雑な説明ですみません) - アフタータッチ対応
当然アフタータッチにも対応しています。アフタータッチとは、鍵盤を押したあと、更に強く押すともうちょっと押せてそれが新しい信号として入力されるもので、デフォルトだとそういうCCが当てられています。Prominyの音源あたりはビブラートがアフタータッチですね。
欠点
で、一見値段以外のスキがない機材に見えますが、実は結構困ったポイントがあります。
モジュレーション・ピッチベンドがタッチバー
まずハードウェア的なところから、どんなMIDIキーボードにも必ずついているモジュレーションとピッチベンドの操作部ですが、KOMPLETE KONTROL Sはタッチバーになっています。
これが厄介で、Rolandのキーボードとかにあるスティックとかホイールタイプと比べるとまーセンシティブすぎて操作しにくいんですよね。特にピッチベンドが厄介で、ちょっと触ると反応するせいで下に振れてほしくないのに微妙に下に行ったりとかするのが曲者です。
モジュレーションは他のMIDIキーボード同様手を離してもニュートラルに戻らない仕様ですが、指で下に戻してもどこが0なのか解りにくいです。ホイールタイプだと「コツン」っていうまで下げたら0じゃないですか。そういう感覚がありません。タッチ操作系の罠ですね。
KOMPLETE KONTROL(ソフトウェア)に対応してないと前述の機能が全滅
あとソフトウェア的にしょうがないのですがNative InstrumentsのNKSに対応した一部の音源しか前述の機能が動きません。これは仕様なのですが、他の音源を重用する方からしたら致命的です。
どういうことかといいますと、KOMPLETE KONTROL(ソフトウェア)で読み込める音源じゃないとキースイッチやスケールの表示ができないということです。
で、その「読み込める音源」というのがNative Instrumentsの「NKS」という形式に対応した音源だけであり、サードパーティでもそれに対応しない限り絶対にキースイッチやスケール表示ができないので、実はまだまだ発展途上です。KONTAKT音源であっても例外ではなく、対応していなければ前述の機能は使えません。
対応している音源は以下のページに列挙されています。
Komplete : 鍵盤 : Komplete Kontrol S Series : Nks : Nks Partners | 製品
まとめ
Native Instrumentsの囲い込み戦略が光るMIDIキーボード、KOMPLETE KONTROL Sの紹介でした。
非常に高い上に機能がニッチで、スケールガイドやコードガイドは鍵盤弾けて理論知ってるひとからしたら無用の長物ですし、音源の対応が半端なのは明らかに課題です。というわけで非常に人を選ぶことについては気をつけないといけません。
一方でわたしのようにほぼメイン音源がNKS対応できちゃってるというパターンの場合、かなり強力な武器となってくれることでしょう。ちなみにKOMPLETE 11に収録されている音源は全部対応しているはずですので、KOMPLETEがメインの人は価値があることになります。
Native Instruments ( ネイティブインストゥルメンツ ) KOMPLETE KONTROL S61 | サウンドハウス