ありんこ書房

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初心者が見落としがちな、iZotope Neutronでできない重要な3つのこと

      2017/10/16

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iZotope Neutronは素晴らしいプラグインですが、落とし穴がありますのでこれを把握する必要があります。
御機嫌よう、蟻坂(@4risaka)です。

iZotopeからNeutronという「ミックスの設定を提案してくれるツール」というなかなか革新的なプラグインが発売されたのは、DTMerの皆様ならなんとなく把握している通りです。

iZotope Neutron | Channel Strip Plug-in

iZotope ( アイゾトープ ) Neutron | サウンドハウス

iZotope ( アイゾトープ ) Neutron | サウンドハウス

そして、それらに付いてDTM系のブログを書く方が様々な感想を述べているのも、読者の皆さまがなんとなく把握されている通りです。
「結局何ができるプラグインなの?」という観点だと、やはりこちらのブログ様の記事が一番かと思います。

トラックを解析し自動で適切なコンプとEQをかけてくれるプラグインエフェクト「Neutron」でミキシング2.0の時代へ | こおろぎさんち

最適なEQコンプの設定を提案してくれるということで、「下手なことをするよりミックスの設定は綺麗に収まる」というのは確かです。
しかしながら、「Neutron使えばなんにも考えなくてもミックスできるね!やったね!」という話かというと、水を差すようですが誰もそんなこと言ってません(メーカー含めて)

というわけで、本記事では「Neutronではできないこと」という暗黒の見出しで全力で余計なことを言おうと思います。

iZotope Neutronでできないこと

まず確認しますが、iZotope Neutronの「Track Assistant機能」を使うと、以下のようなフローで概ね搭載されたチャンネルストリップの設定がなされます。

  1. しばらく待たされる(トラックを再生することで解析)
  2. EQ、コンプ、トランジェントの設定を自動的に行う

本当にこれだけでEQコンプがある程度設定されるので、なかなか良い感じです。
逆にいえばそれ以外のミックスに関連する要素はてめーでやらないと駄目です。順番に見ていきましょう。

アウトプットゲインの調整はできない

いろんなトラックでTrack Assistant動かしてみましたが、アウトプットゲインはなんにも変わらないので自力で調整する必要があります

画面キャプチャでいえば以下のところ。

アウトプットゲイン

アウトプットゲイン

アウトプットゲインの調整がされないことの何がどうなのかって話ですが、「Track Assistantポチ」で思考停止をした場合、全体で見るとそのトラックの音量が飛び出たり引っ込んだりする可能性があるのです。

コンプをかけたとき、「圧縮によって音量が下がる」という現象が大小必ず発生しますので、普通、コンプのアウトプットゲインを調整して音量をバイパス時と変わらない程度に調整する必要があります。
で、Neutronのコンプには「Auto Gain」という機能があり、このアウトプットゲインの調整をある程度自動でやってくれます(Track Assistantを押して提案される設定は、これが有効になっています)。

オートゲイン機能

オートゲイン機能

じゃあやっぱり考えなくていいじゃんって思うでしょうけど、やってみればわかりますがBypassと聴き比べるとちょっと音がデカいとか普通にありますので、手動でアウトプットゲインの微調整はやっておく必要があります。

なぜ必要かというと、トラック全体の音量バランスが整ってないとマスタリングで音圧が上がりきらないからです。オートゲインである程度調整はしてくれてるんですが、過信しすぎるとハマります。

マスタリングで音圧が上がりきらないということはミックスが上手く行ってないということですので、丁度あなたが思い描く「Neutronでミックス終了じゃね!?」みたいな幻想はもろくも崩れ去ることになります(もちろん平均点レベルは簡単に狙えますが)。

というわけで、なんにも考えないでTrack Assistant叩くだけだとアウトプットゲインが適切である保証ができません。
これについては、「Bypass」ボタンを押してNeutronを適用させない状態の音量と、適用させたときの音量がだいたい同じなのを聴きながら調整すればOKです。そんなに難しい作業ではないと思います。

トラックの音量調節は当然できない

NeutronじゃなくてDAWで調整する機能なんだから当然なんですが、トラックごとの音量バランスの調整はご自分でやっていただく必要があります。
トラックごとの音量バランスの調整というのは、ミックスのフェーズにおける以下のようなフェーダーワークのことです。

音量バランスの調整

音量バランスの調整

で、Neutronが提案してくれる各種設定は、オケの音量バランスが最も整っているときに実施することで真価を発揮するのは言うまでもありません。
なぜならば、ミックスの目的は「バランスを整えること」だけであり、そのための最初のステップが「トラック間の音量とパンの振り方を整えること」から始まるからです。

最初のステップを外していきなりEQとかコンプをかけるのは目的を誤っているはずです。EQとコンプは「フェーダーワークとパン振りだけでは回避できなかったところをケアする」のに使うべきです。
たとえばどうしても帯域がかぶっているところの調整とか、どうしても飛び出るアタック成分をコンプで圧縮するとか、そんな感じです。

というわけで音量バランスについては自力で頑張るしかありません。
これについては、バンドサウンドについては石田ごうきさんの著書が「バスドラムを基準にしてどの音色は何%位の割合にすれば良い」というのを一から丁寧に書いていますので非常に参考になります。っていうかほとんど答えが書いてあります。

関連記事もよろしければ御覧ください。
→ 【 石田ごうき著「音圧アップのためのDTMミキシング入門講座!」は、ミックス初心者のためにある本でした。

アレンジを上手くまとめないといけない

そして最後にアレンジ。やっぱりNeutron関係ありませんがそりゃそうですその手前のほうが曲の完成度という意味では遥かにウェイトが大きいんですから。

アレンジというのはそのまんまの解釈をするとメロディにコードを付ける作業ですが、ここでは「ベースとかウワモノとかいろんな音色を置いていく作業」だと思って下さい。
楽曲のオリジナリティを左右する部分なのでやってて一番愉しいんじゃないかと思います。

それで、ですね。
この「音色を置いていく作業」、気をつけないとミックスのときになってからにっちもさっちもいかなくなることがあります。

どういうことか?iZotopeが提供する以下の図をご覧ください。

Carnegie Chart | iZotope

Carnegie Chart

Carnegie Chart

このように、各音色には周波数帯域に特徴的な分布があります。ベースなら低域に寄ってるとか、女性ボーカルは高いところにあるとか、直感的に理解できるかと思います。
それで、仮にあなたのアレンジで選択された音色がめっちゃ低域に寄ってたらどうなるでしょう?何やっても低域のブーミーさが解消できないヤバいトラックになりますよね。

従いまして、音色を増やしたとき、周波数帯域が被りすぎてミックスでもどうしようもないトラックにならないためにアレンジを意識する必要があることが推察できます。
これについては「ジャンルの定石を守る」ことである程度回避することができます。ロックのバンド編成や室内楽の編成がすでに完成されているのは、耳触りが良くなるそれなりの理由があるわけですね。

逆に言えば、チャレンジして今までのジャンルになかった音色を足したり異ジャンルを混ぜようとした場合、「帯域だだ被り事件」が起こらないようにする覚悟が必要となります。

まとめ

iZotope Neutronはとってもイノベーティブなミックス用プラグインですが、「アレンジが整っていて、音量バランスが整っていて、アウトプットゲインの違和感を感じ取れる」状態まで持っていかないと「なかなかミックス上手く行かないなあ」というラインを脱するのはまだ困難があります、という話でした。
ミックスプラグインはどんなに凄くても魔法ではありません。EQコンプで悩む前にトラックのバランスを整えないと上手くいかないよ、ということです。

この他にもNeutronにはリバーブが無いので、センド量の設定なんかは自分で考える必要があります。
よくある「風呂リバーブ」みたいなミスをケアしたいならば、自分の知識でなんとかするか、簡単な回避方法としては「音源に付属しているリバーブのプリセットを使う」という手があります(特にオーケストラ系)。
またこれについては、「最低限ここを押さえたら大丈夫じゃないかな」というのを記事にしてみましたので、よろしければご覧ください。
(参考記事: DTM初心者が陥りがちなリバーブの4つのミスとその対処)

音量周りの話は、WavesのVocal Riderがオケの音量から自動でオートメーションを引いたりする機能を実現してますので、更に進化していくのを期待しています。

それと一個忘れてたんですがこれも重要なので付け加えておきます。Neutronは曲を作りません(煽るな)。

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