ゴシックな曲を「それっぽく」仕上げるための3つのエッセンス

同人音楽界隈で一大カテゴリを築いた「ゴシック系」。
本記事では少しでも憧れのあのユニットに近づけるように、まず「それっぽく」仕上げるコツを載せてみます。
ごきげんよう、蟻坂(4risaka)です。
本日のレシピ
今日の同人音楽の「ゴシック系」を見渡しますと、そうはいっても色々ございます。
ゴシックロックとか、V系っぽいアレとか、テクノ要素あるやつとか。
本記事ではとりあえず、なるべくシンプルに済ませられるように
4つ打ちでなんかデカダンな感じのやつを書くことを目標としましょう。
というわけでこちらが完成品です。主旋律が無いのはわざとです。
Like the gothic by Arisaka on hearthis.at
ミキシングはともかく割とそれっぽいでしょう?
というわけで早速やってみましょう。
つくりかた
今回の「それっぽさ」エッセンスは以下の3つの要素です。
- ベースが半音ずつ下降する進行
- ペダル奏法
- 楽器編成
順番に説明していきます。
ベースが半音ずつ下降する進行
書いたまんまです。この進行をマイナーキーで使うとなんとなく寂寥感や退廃感が出ます。
今回の例では、Aハーモニックマイナースケールを使用し、
コード進行は
Amin AminM7/A♭|CM7/G Bmin/G♭|Bmin7(-5)/F E7|Amin7(-5)/E♭ Amin7/E|
Amin AminM7/A♭|CM7/G Bmin/G♭|Bmin7(-5)/F E7|CM7(♭13)/B Amin7/E|Amin|
という構成にしています(クリック/タップで拡大)。
一見なんだか難解に見えますが、要するに転回して最低音が半音ずつ下がっていくように仕組んだだけです。
最後の方に突然CM7(♭13)とかいうのが居ますが、
なんとなく生まれただけで本題と関係ないので本記事では無視します。
前半の4小節ぶんを2回繰り返すだけでも問題ないとおもいます。
Cubaseのコードトラックをそのまんま鳴らしてみました。
上下してますが完成品は先程お聴きいただいたとおり下降するように調整しています。
Like the gothic(Chord) by Arisaka on hearthis.at
これにしたがってベースを組みます。
4つ打ちなのでシンプルにオクターブベースを
さきほどの転回コードの最低音をそのまんま打ち込みます(クリック/タップで拡大)。
上のオクターブは16分音符で歯切りのいい感じにします。
ペダル奏法
ペダル奏法という奏法というかメロディの組み方があります。
もともとバロック期のパイプオルガンやハープシコード(チェンバロ)のための技術で
通奏低音という常に変化しない低音を軸(ペダルポイントと呼びます)にして
旋律を構成するワザです。
ちなみに「ペダル奏法」というと、大体
ネオクラ系のエレキギターのメロディの組み方のことを指します。
ギター用語集 は行 | ギタースタイル (下にスクロールして「ペダル奏法」の項を参照)
というわけで、その「バロック期のハープシコード」のところに
ペダルポイントを使ったようなそれっぽい旋律を組みます。
はい、実は全然ペダルポイントしていません。
この場合、本来通奏低音にあたる音はピンクの四角で囲っていない低い音になります。
本当は低い音はコード進行にかかわらず動かないのがペダルポイントのあるべき姿なのですが、
今回は半音進行を先に組んでしまったのでそれに引き摺られてしまいました。
もはやペダルポイントではありません。
しかし問題ありません。
本記事の目的はそれっぽいトラックを書くことです。
実は、ここでペダル奏法「風」の組み方をする目的は
ハープシコードをあーなんかクラシカルだねーって感じの響きにするためです。
Like the gothic(only harpshichord) by Arisaka on hearthis.at
ほら、なんかそれっぽいじゃん!
というわけでゆるくいきましょう。
……ちなみに、バロック期の手法をそのまんまトレースするほうが当然良いので、
真面目にペダルポイントしたほうが更にそれっぽくなります。応用のための参考として。
楽器編成
これは特に難しく考える必要はありません。
沢山音楽を聴く人ならばいうまでもありませんが、以下の3点を守っています。
- ヴァイオリン(ソロでもセクションでも)
- チェロ(ソロでもセクションでも)
- ハープシコード
荘厳なオーケストラを組まない以上ヴィオラとコントラバスは不要です。
むしろミックスの難易度が上がるので余計なことはしないで「高音弦・低音弦」くらいの
ざっくりとした区分けで問題ないとおもいます。結構それっぽくできます。
もちろんあったほうが応用が効きますが、今回はパスです。
ちなみに、ストリングスの組み方はフィーリングです(クリック/タップで拡大)。
「コードの構成音からなるべく外さない」を守れば間違いないと思います。
慣れてきた方は対位法や和声法に基づいた組み方をしてみてください。
ぐっとステップアップできるとおもいます(本記事では扱っていませんが)。
ハープシコードですが、これは外せません。
言うまでもなくこれを使った途端に曲全体の雰囲気が化けます。
加えて前述した「ペダルポイントもどき」を使うと更に効果が大きいとおもいます。
その他
ドラム、ギター、ベースの音選びについては詳細を省略していますが、
いずれもあまり主張しない音色を選ぶのが良いとおもいます。
ギターについては適当なオーバードライブ系の音作りにパワーコードを載せると
今時のゴシック系といった感じになります。
現代っぽさが不要な場合、ギターレスで別の音を考えるのが良いでしょう
(ストリングスをもっと厚くするとか、アコギにするとか)。
今回のような「4つ打ち+パワーコードのギター+ストリングス+ハープシコード」は
無難に音を厚くできるので簡単でおすすめです。
まとめ
以上、ゆるくゴシックな曲調を組み立てるエッセンスの紹介でした。
コード進行が一番ウェイトが大きく重要だとおもいますが、
音色選びやメロディのそれっぽさのいずれが欠けても思ったようにならないかとおもいます。
もちろんこの記事で紹介した内容は主旋律すら無いシンプルな組み方の一例ですので、
たとえばバンドサウンドに応用する場合や、更に音色が増えた場合など
様々な応用例が考えられます。
これらのパターンについては皆様のセンスで色々発明するのが一番愉しいところですので
是非いろいろ実験してみてください。