ありんこ書房

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初心者DTMerの若い芽を摘む禁断の方法と、その防衛策

   

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恐ろしいタイトルですが言いたいことは後半に書いています。
御機嫌よう、蟻坂(@4risaka)です。

「大公開時代」が可視化する新鋭クリエイターのたくさんの芽

最近はなんでも作ってインターネットに公開すれば、上手く行けば注目を浴びれる時代です。
自分の部屋から世界に向けて発信することが一瞬でできちゃうので、便利になりましたねー。

ニコニコ動画なんかを見ていると確かに新鋭のクリエイターが沢山出現していて、
そこからメジャーデビュー、プロデビュー、みたいな出世ルートをたどるパターンも少なくありません。

これに影響を受けた人たちが、今日見かける「初心者」というもので、
DTMerなんかだと音ゲーとかVOCALOIDみたいな沢山の影響元から始める方をよく見かけますね。
で、大公開時代なのでちょっとセンスがあるとあっというまに成長しちゃいます。良いことです。

そんな始めたばかりのあふれるセンスを叩き潰す3つの禁断の手段を書いてみました。
「なぜそんな記事を書いたのか?」というところも踏まえて御覧ください。

初心者DTMerの若い芽を摘んでみよう

大きく分けて3つ、

  • 技術的ハードルをやたら高く見せる
  • 成長のハードルをやたら高く見せる
  • ポジティブフィードバックを禁止・制限する

順番に見ていきましょう。

技術的ハードルを高く見せる

DTMにおける「技術」というのは、たとえば音楽理論、ミックスのスキル、音作りなんかを指します。
なので、始めたばかりの人の心を折るにはこれとこれとこれが必要!それは最低限!と念押しすることです。
具体的には、なんでもかんでも自力でやれる必要性を説くといいでしょう。

  • 音楽理論は必要
  • ミックスとマスタリングは覚えないとだめ
  • プリセットに頼ってちゃだめ
  • 楽器を弾けないとバンドサウンドは無理
  • 機材は最低限オーディオI/Fとモニタースピーカーとあれとこれとそれと必要

ほら、なんかDTMerがなんでも一人で出来てお金持ちのスーパーマンに見えてくるでしょう?
そうなると「これ自分でもできそうだ」感が全く薄れてきますので、モチベーションを落とさせるのに十分な材料になります。

あとはそうですね、CD頒布にあたってはIllustratorを使いこなせないといけないとか、
音楽以外の面でも相当やることが多くてめんどくさいアピールをするのも効果的です。

成長のハードルをやたら高く見せる

技術的なところを押さえても何か作ってくる人には、一昼夜で成長できない現実をぶつけましょう。
よく言われるものだと以下の様な事柄でしょうか。

  • まずは100曲作れ話はそれからだ
  • 100曲作らないうちは今後の伸びは期待できない
  • 10,000時間やるとその道のスキルは付く、それ未満であればまだまだだ

量から質が生まれるというのは確かに真理なので、継続するのは重要です。ここは真面目な助言です
まず第一のポイントは気が遠くなるような期間を設けて結果が1年くらいじゃ得られなさそうに見せることです。

もうひとつ重要なポイントは何曲作ってきてもほっとくことです。
「がむしゃらに100曲作れば上手くなる」と思わせておけば、1回あたりのスキルアップの幅が異様に小さいので時間稼ぎができます。
その間に先ほどの技術的なところやこの次に述べるポジティブフィードバックの制限で畳み掛けましょう。
そうでなくても、成長面で全く評価されない期間を1年も2年もぶつけて折れない人はそうそういないはずです。

ポジティブフィードバックを禁止・制限する

これは教育環境などの観点で非常に効果的な方法です。
生々しい実例が混ざりますが、次のようなのが実際に用いられていますね。

  • 年齢しか評価しない(高3でこれとかすげえ! だけ。楽曲自体は絶対に褒めない)
  • 「公開してなんぼだ」とアドバイスをした上で、公開してきてもほっとく
  • アドバイスで改善点を指摘しまくるが「良いところ」を挙げない

一番上の「年齢しか評価しない」というのは機能不全家庭などで用いられる手法の応用です。
たとえばテストの成績をほめて他の一切を否定すると勉强だけにアイデンティティを見出す子が育ちますが、
若さのアドバンテージって勉强と違ってそのうち勝手になくなるので自動的にアイデンティティを失うという寸法です。

2番目と3番目は教育におけるダブルバインドの応用です。
「アウトプットすればアドバイスが貰える」という期待を裏切って存在を否定し絶望させるというやり方と、
「自分には問題点ばかりで才能がないんだ」と思わせて絶望させるやり方です。
更に「切磋琢磨するのは普通でみんなやってる、お前が甘い」と追い討ちをかければ完璧です。

人間の心理を直接破壊しに行くので、他の2つより遥かに実効的で強力です。まじめに注釈すると人格に関わるのでやっちゃ駄目です

なぜこんな記事を書いたのか?

はい、自分でも書いててあまりにもヒドいと思いましたのでそろそろネタばらししますが、
これまでの内容は無駄に体育会系な手段を使って無意識の内に排他的になってませんか?という問題提起です。
一個ずつ否定していきましょう。

  • 音楽理論は曲を作る職人技を誰にでもわかるように体系化したものなので、結果が得られれば必須ではありません。
  • 機材なんて最低限でなんとかなります。それより楽しく作るモチベーションのほうが大事です。
  • プリセット上等です。結果が出てそれっぽく仕上がれば愉しいんです。
  • 最近の打ち込み音源はフリーでも凄いので楽器が弾ける必要性は低いです。
  • 100曲がむしゃらに作るより10曲真剣に作ったほうが効率的です。
  • 10,000時間やらないといけないのはそれで生活するレベルです。マネタイズが要らない趣味なら明らかに不要です。
  • 成果物に年齢は関係ありません。貴方が結果を出したタイミングがたまたま10代か20代か30代かというだけです。

これらの必要性とかを無意識の内に信仰するようになってませんか。
それを初心者に当然のように課すことで芽を摘む活動に貢献してませんか。

芽を摘まれないために(やる気を落とさない方法)

最も必要なのは機材でも理論でも大量のアウトプットでもなくて楽しく続けるモチベーションです。
そのためには、先に挙げました「襲い来る挫折要因」を徹底的に迂回して、「まずは楽しく続ける」ことが肝心です。
100曲作るのは目的ではありません。楽しく続けてたらいつのまにか100曲作ってたというただの結果です。
この状態を目指せるように策を打っていきましょう。

理論を迂回する

ろくに制作してない状態で真正面から楽典を始めると結果を出す前に辛くて挫折します。
そこで、スマホアプリとかWebサービスを使って結果だけ手に入れるところからはじめましょう。
→ 【 音楽理論の勉強を一旦放置して簡単に楽しくコード進行を組み立てる3つのショートカット
→ 【 コミュ障歌い手のための、自力MIXで歌ってみたを仕上げる裏ワザ機材3選
→ 【 音楽理論が苦手な初心者DTMerは、「Chord Tracker」で好きな曲のコードを真似しよう

機材を迂回する

実際必要なものなんて本当に最低限なのはこの間思考実験してみてわかりました。
スピーカーだってスピーカーシミュレータでいいとか、やりようはあるはずです。
DTMの機材を断捨離して超最小限環境にする思考実験をしてみたら、意外と出来ることがわかった

音源だってフリー音源がたくさんあります(弊ブログで書いているのはKONTAKT前提なので申し訳ないですが)。
場合によってはこちらもスマホアプリという格安で迂回する方法があります。
マスタリングなんかは無料のWebサービスに投げればいいんです。
→ 【 オーディオIFなんか要らない。「歌ってみた」を始めるなら、まずiRig Micを買いなさい。
→ 【 フリー音源でできる、ドラムのスネアロール(バズロール)の超簡単打ち込み方法
→ 【 480円でiPhoneをMIDIキーボードにしてしまうアプリ「MIDI Studio」が凄い
→ 【 全自動マスタリングサービス「eMastered」と「LANDR」を音源付きで比較してみた
→ 【 KONTAKTさえあれば使える、フリーのギター音源3選(1つは無くても使えるよ)
→ 【 KONTAKTさえあれば使える、フリーのベース音源3選(エレべ、アコベ)

これだけ徹底的に省略・迂回すれば、100曲もやらなくても「それっぽい成果」は得られます。
それでも壁にぶつかったら、そのとき初めて機材を検討したり理論をちゃんと勉強したりすれば良いのです。
その頃には真正面から挑んでもモチベーションが落ちない自律性が身についているはずです。

初心者時点で真正面からやると、何をして良いのかわからない=上級者の話を鵜呑みにする=モチベーションを上級者(の話)にコントロールされるというのが問題なのです。
自分で判断できるようになるまでは楽することを考えましょう。もちろんこの記事のこの助言を鵜呑みにしないことを含めて。

ポジティブフィードバックをどうやって得ればいいのか

これ、わたしも考えあぐねているのですが、
全く上等な成果を得られない段階でやる気を落とさないにはどうすればいいと思いますか?

まず多くの「聴き手」のひとたちは正直なので、初心者だろうが上級者だろうが悪いもんは悪いとしっかり判定します。
ということなので、普通にニコニコとかに公開していくのは重要ではありますがモチベーションの観点で得策とは言い難いです。

次に、SNSでツナガリを持っている人たちは間違いなくこっちに関心がないのでそもそも感想をよこしません。
TipsはいくらでもFavしますしネタはいくらでもRTしますが、これは事実としてそうなのでSNSで褒め言葉を集めるのは難しいです。
特に最初の頃だとミックスなんかもわからないので相手からしても実直に評価しがたいのもあると思います。

まず思いつくのは気心知れた相手と組むというところで、
わたしの場合同人サークル活動でゆる〜くメンバーでお互いにいいねいいね言い合ってたらいつのまにか楽しく続いてた、って感じです。
いわゆる「駄サイクル」なのかもしれませんが、モチベーションを落とさないという目的であれば効果的です。「駄サイクル」はあとから解消しても間に合います。

駄サイクルとは – ニコニコ大百科

しかし、孤独から始まってて誰も頼れない場合はどうすればいいんだってなりますよね。ここは正直悩んでいます。
DTM Magazineの投稿コーナーなんかは有効ですが、結構コテンパンにされるのでモチベーション保てるか?っていうと怖いかもしれませんし。
これについて、当事者(だった)方が本記事を読んで共感でも苦言でもなんでもいいんですが思うことありましたら寄せて下さいますと幸いです。
適当に言及してくれればエゴサーチで勝手に拾います。

まとめ

という具合に、ちょっと棘を持たせつつ、記事タイトルに反して初心者を無意識の内にいじめてないかという話と、今DTMに真正面から突撃したら上級者に殺されるから迂回しろという話でした。
多少イレギュラーな方法である程度のところまで登れば、そこから従来の方法で知識を回収しても間に合います。

ちなみに本記事、感想を受け取るための「認知・広告・拡散」あたりの話については触れていません。
意外とこの辺にヒントがあるかもしれません。

ひとつ言えるのは、もし弊ブログのハウツー記事に検索からいらっしゃった方はわかるかと思いますが、
ググれば迂回手段が沢山出てくるということです。旧態然とした真正面からの取り組みはもうやめましょう。
そして、怪しいアドバイスや「空気」に対して「は?」と言える芯の強さを身につけて、それが救いになればいいと思います。

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