ありんこ書房

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同人制作の報酬が不透明過ぎるので、相場について答えを出してみた

      2016/05/10

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依頼を受けるなら高めに価格設定したほうがいい、というハナシです。ちょっと長いです。
御機嫌よう、蟻坂(@4risaka)です。

同人制作の報酬

ここのところ、twitterのプロフィール欄に以下のような記述をされる方をよく見かけます。

「依頼募集中」
「依頼はこちらまで→メールアドレス」

が、ウェブサイトやその他の詳細な記述が一切無いので
有償なのか無償なのか、有償ならいくらなのかさっぱりわかりません。

仮に相談からスタートするとしたら時価といえるわけですが、
相場が決まっているなら明記してほしいなーなどとおもいました。

しかし、あまりにもこの手の記述を多く見かけるため、実は相場なんて無いんじゃないか?と考え始め、
「有償依頼はこちら」の報酬の相場を論理的に見積もって、堂々と掲げられるようにできたらいいなとおもって書きました。

結論を申し上げます。

原則として高めに設定し、安請負は絶対にしない。それでも値下げor無償にするなら、条件を設定するべき。

そういう考えに至った結論を以下に述べていきます。

フリーランスと同人

個人でサービスを請け負って、相手の要求に沿うものを提供する、という形態であれば
「フリーランス」という業種が一番近いです。

フリーランス – Wikipedia

特定の企業や団体、組織に専従しておらず、自らの才覚や技能を提供することにより社会的に独立した個人事業主もしくは個人企業法人である。

では、このフリーランスの方の報酬の見積もり方を参考にするとどうなるでしょう?

フリーランスの報酬設定

わたしの知り合いに、フリーランスとしてずっと頑張っているひとがいます。

そのひとのフィールドは音楽やイラストの世界ではありませんが、
時給3,500円〜という単価で仕事の依頼を受け付けています。

フリーランスのひとは、同人と異なり「個人事業主」というれっきとしたビジネスマンです。
また、個人で事業を動かすという特性上、報酬の見積もりは以下の様な要素が絡んできます。

  • 事業を発展させるための投資を考慮にいれる必要がある
  • そのサービスやモノを提供する原価(コスト)を回収する必要がある
  • 自分の生活コストも当然そこから支払うので、見積もる必要がある

会社が設備投資や株主への還元、従業員の給与という分配を行うのと同じです。
サラリーマンが給与=生活費で換算できるのと異なり、
事業の運営費という枠で取る必要があるので、必然的に高額な時給になります。

同人の報酬設定

一方、同人は「作品を発表し、他人と作品の価値を共有し、楽しむ」というところに主眼をおいています。
したがって、「販売」ではなく「頒布」という表現をとり、
作品の頒布価格の目的はコストを回収して次への原資とするただ一点です。
必然的に、ギリギリ黒字を確保できるか赤字に片足を突っ込むような価格設定になります。

では、その「最低限のコスト」の支援を行う「同人制作依頼受け付け」というポジションにおいて、
適正な報酬の値段というのはどのように設定すべきなのでしょうか。

フリーランスと同人制作支援の境目が曖昧になってきた

これまでの内容から判断すると、
「同人作品はコスト回収程度を目的としているので、制作支援はそれに合わせるべき」と
いえるかもしれません。

しかし、それは全体で見ると危険な選択のように思えます。
なぜならば、インターネットとソーシャルメディアによって、買い手がクリエイターを選び放題になったためです。

クラウドソーシングサービスによる一覧性向上と平坦化

たとえばランサーズクラウドワークスが有名です。
基本的に個人に対して依頼するのに対し、1回の依頼の価格が非常に安いというのが特徴です(これが批判の的にもなってますが)。
これは先程書いたフリーランスのひとの報酬の見積もりと逆行するものになります。

これが買い手、つまり依頼する側の立場になってみると、
よくわからないtwitterのbioやWebサイトから突撃するより断然楽で報酬もはっきりした箇所に安く依頼を出せるということになります。
そして、これは誰でも簡単に登録できてしまうため、
企業でも同人でも別け隔てなくクリエイターが依頼を受注・評価される環境が発生してきたと考えられます。

何もクラウドソーシングに限ったハナシではありません。
pixivやSoundCloudには、プロやセミプロのイラストレーターやトラックメーカーが軒を連ね、
買い手やレーベルの関係者から見た時、プロもアマも全く同じフィールドで同列に扱われているといえます。
実際、ソーシャルゲームの開発における買い叩きが発生しているという噂も耳にします。

企業がリリースするリズムアクションゲーム(いわゆる音ゲー)だってそうです。
今までになかった規模で「楽曲を不特定多数から公募して採用する」という動きが活性化しており、
そこにプロや同人作家の垣根なんて全く存在しません。いい作品を仕上げる人が採用されています。

というように、お小遣いを稼ぎたいひとも、フリーランスのひとも、そして同人屋さんも、
すべてが同じ場所に並べられて「依頼を受けて仕事をする」という状況になってきています。

卑屈な価格設定で全てを破壊する方法

そんな中で、同人畑にいるとてつもないクオリティーの作品を仕上げるひとたちが、
依頼の間口を広げたり、自分のスキルをもっとほかのひとに役立ててもらおう、という他意のない意図で
先に上げた「最低限のコストの支援を行う」感覚の値段設定を行ったらどうなるでしょうか。

大袈裟ですが、クリエイターの皆様は容赦なく買い叩かれて疲弊するとおもいます。
安いのがいいひとは、こちらの事情なんて当然無視して、安くてレベルの高いものを選びます。
そして、レベルが高くてやたら安いひとによってダンピングされたサービスは、
フリーランスのひとを殺しかねない状況を生み出すことでしょう。

ということで、単純に安く設定するのは全体で見た時にいい結果を生む気がしない、とわたしは考えます。
承認欲求が他人に迷惑をかける結果を生むことは歓迎されるものではありません。

お高く止まっていいんじゃないかな

今でこそクラウドソーシングのような「インターネットによって平坦化される仕組み」は出てきたばかりですが、
おそらく今後どんどん発展していき、「依頼する側」から見た時に透明性が高くわかりやすいツールは
さらに使いやすくなっていくことだとおもいます。

そうなると、有償依頼を受け付ける、という体を取る場合、
こちらの想いは一旦無視して普通にフリーランス並の価格設定にしちゃっていいんじゃないかとおもいます。

理由は先ほどなんとなく述べましたとおり、「買い手は予想以上にこっちの考えた垣根を無視してくるから」です。
ダンピングが共倒れを起こすのは今更説明するまでもなくわかりきったハナシです。

それでも安く受けてあげたいときは

しかし、同人制作の支援は「繋がり」によって成り立っている部分があるのも事実です。
それこそ「フリーランスといっしょくたにすんじゃねーこっちはビジネスじゃなくて趣味なんだよ」という
意見もあるかとおもいます。
というわけで、フリーランスのひとたちとなんとかして住み分ける方法もあったほうが良さそうです。

そこで提案するのが、こっちから買い手を選ぶという手段です。
シンプル。

「買い手を選ぶ」と言いましたが単純です、
主観的に「安く請けても問題のないひと」を判断して選び、それを明記すればよいのです。

  • twitter相互フォローで何週間か付き合いのあるひと
  • コンピで一緒になったことがあるひと
  • 同人作家だけ(企業オファーは請けません!みたいな)

ちなみにこうすると依頼の窓口の範囲がクローズドになるという問題が別に発生しますが、
オープンにする(=誰でも依頼できる)ようにするとやっぱり買い叩かれそうなので、そこはトレードオフだとおもいます。

無償依頼も同じ理由で危険なので、最初から買い手を選んでしまっていいとおもいます。
これがインターネットとソーシャルの時代に、フリーランスのひと(=常に真っ当な報酬を受ける)と
明確に住み分けする方法ではないかと、わたしは考えます。

偉そう?

ここまでの内容を考えると、
「基本的に高い上に、値引きするには条件が要るのか偉そうだな」
という感想も出るかもしれません。

が、もともとの同人の嗜好と値段設定を考えてみましょう。
ビジネスと異なり、採算性を意識しないのが同人の特徴であり面白いところです。
なので、買い手のこだわりと売り手の価値が合致すれば、高くても大丈夫です。

買い手が実現したい内容に合致するクオリティ・需要なら、相応の対価を払うひとが必ず居ます。
もちろん法人からの依頼であれば相場通りの価格で全く問題ありません。

というわけで、多少お高く止まっても問題ないんじゃないかとおもいます。
(もちろん、態度は紳士淑女を心がけなければなりません)

むすび

以上、みなさまの作品には価値があるのだから、
相応の値段を付けてお高く止まってもいいとおもう、というハナシでした。

ただ、クラウドソーシングによるサービスの低価格化が
同人もフリーランスも巻き込んでいき、新たな問題を生みそうな予感がしておりますので
住み分けの次はどうやって立ち回っていくべきなのかなぁ、みたいなのは課題として今のところは考察をおいておきます。
ココナラなんか最低500円なので尚の事考えないといけませんし。

そうそう、途中に書いた「高くても大丈夫だよ」っていう論理ですが、
以下の書籍がマーケティングとか経済の観点からわかりやすくまとめてあります。
タイトルが胡散臭いですが理屈がある程度正しいので大いに参考になります。

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