「アナログ感」が売りのコンソール系DTMプラグインは超後回しでいいよね
2016/08/10

物欲をコントロールするために理屈でねじ伏せる記事です。
御機嫌よう、蟻坂(@4risaka)です。
「アナログ感」というセールストーク
近年、Slate DigitalやAcoustica Audio、あとWavesなんかも「往年のコンソールラックを再現」みたいな触れ込みで新たなプラグインをリリースしています。
これらの特徴としては、
- 昔の機材っぽいGUI
- 「アナログ感」という文句
- デジタル感のないツマミによる操作
のようなものが上げられます。なんだか挿すだけでミックスに色が付きそうな感じがして、いい曲が作れそうな雰囲気があります。
が、待ってください、本当に必要な要素でしょうか、その「アナログ感」とやらは。
というような疑問が出てきたので、理屈で「要らないわ」と結論、もとい自己弁護してみました。
「アナログ感とは?
そもそも「アナログ感」ってなんでしょうか。
イメージ的には、デジタル信号処理全盛期のなかで、あえて昔のコンソールラックの効果を再現するような細工が為されている、というような感じです。では、数値としてどういう変化があるのか?気になりますよね。
これについて弊ブログで調べてみようとしたんですがすでに先駆者がいらっしゃったので参照記事にとどめておきます。
→ 挿すだけで音が変わるとはこれ如何に!? | SF2K LAB.
こちらの記事を参照しますと、どうやら挿すだけで入力音源に対して倍音を盛るとかアナログ風ノイズを付加するという挙動を示しているようにみえます。サチュレーターとかテープシミュというのは大体このような動作をしているようです。
つまるところエンハンサーのそれを「アナログ感」を売りにするEQやコンプは行っているということが考察できそうです。
(参考: DTMプラグイン「エンハンサー/エキサイター」が行う処理とは)
で、「往年の銘器をシミュレート」という触れ込みであれば、たぶんその元になっているコンソールの挙動を示したようなサチュレーションとかエンハンスを行っていると推察されます。
なるほど、プロがずっと使ってきたものをエミュレートしているので、ミックスの際に使うとそれっぽくなってくれるんじゃないか、という期待がありますね。
「アナログ感」、最初は要らないと思う
というわけで、コンソールエミュレートをしてくれることで豊かな倍音が付加される、ということが考察できました。
さて、そんなふうに豊かな倍音が付加されて、プロのエンジニアが使うコンソールのアナログ感をアマチュアでもモノにできるとして、それ、嬉しいんですか?という疑問が出てきます。
時代が違う
まずアマチュア・ハイアマであったり、デジタルレコーディングからスタートした若手なんかだとそもそも往年のコンソールが無くてもいい時代に生きていると言えますので、その恩恵にわざわざ授からなくてもいいモノを作れるというのがあります。
ということは、別に「アナログ感」とやらに依存しなくてもモダンに上手くまとまったミックスが出来て聴きやすければそれで良いわけで、さきほどの倍音の付加という数値上の変化が聴き手的にどうオイシイのか見えてきません。
てことで、無理に追求しなくていいんじゃ?と思ったりします。
デジタル的・アナログ的なミックスのそれぞれが「良い」「悪い」ということを明確に断定するためのモノサシがそもそも存在しません。「アナログ感」は「必要だったら付加する」べきものであり、「付加すると良い」ことを示すものではありませんよね。
アマチュア・ハイアマの場合明らかに優先度が低い
もうひとつあります。アマチュア・ハイアマ、要するに初心者とか同人音屋と呼ばれる趣味DTMerの場合なんですが、明らかに優先度低いです。
よく言われてることなんですが、たとえばセールで安くなったアナログエミュレート系プラグインに飛びつくけどモニタースピーカーが無いとか馬鹿みたいじゃないですか。
そのモニター環境でどうやって「アナログ感」で付加された豊かな倍音を聴きとるんだよ、みたいな。なので、どうせお金を使うなら先に出力(スピーカー、オーディオインターフェイス)に投資すべきであって、「安いから買う」という消費社会の奴隷みたいな行動はよしておきましょう。
別に凄いの買えって話じゃなくて、最低限は揃えてから考えるべき話で、財布の紐を緩めるべきはそこじゃない、という意味です。
FOSTEX ( フォステクス ) PM0.4n(MB) | サウンドハウス
で、出力がリッチになったとして、じゃあ「アナログ感」があればミックスが良くなるのかっていったらやっぱりそうじゃなくて、次は知識と実践のほうが重要になってきますし、安いからってコンソールシミュをセールで買って変なミックスにしかならなくて音圧が出ないんじゃやっぱり意味がありません。
メーカーのセールス戦略に乗せられているだけの消費者になってしまいます。
となると、限られた予算で豊かになるには知識(実践)と適切な出力環境がまず必要で、プラグインソフトは後回し、といった普遍的な考察が得られます。従いまして、わたしとしてはコンソールをエミュレーションした「アナログ感」を付与するプラグインは全く後回しで良いと結論します。
まとめ
なんだか説教臭い記事に見えましたでしょうか。実はこれ単なる自省で、お前は上手くもないのにプラグインコレクター的に買い漁ってないだろうな、それは違うぞというセルフ説得を試みたかった意図があります。
(一方でこんな記事→DTM機材は「ほしいもの」から | 初めて買ったモニターヘッドホンのおもいで を開設初期に書いてるので矛盾もいいとこですが)
ただ実際その通りで、「セールだから買う」を繰り返していると年間数万円の出費になって、それこそ結構いいモニタースピーカーとオーディオインターフェイスを買えるという残酷な事実を示したりします。
特に今回の「アナログ感」を売りにしているものなんかアマチュア的には要らんもの筆頭だと思いますので、「限定」とか「○○%OFF」みたいな文句に踊らされないで自分の頭で考えられるようにするのが良いと思います。
「アナログ感」が必要だ!と自分で判断できるようになったら、そのとき真価を発揮して良き武器になってくれるんじゃないかと思います。
STEINBERG ( スタインバーグ ) UR22mkII | サウンドハウス