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ベースを歪ませると低音が痩せる問題を解消する方法

      2016/08/29

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低音を保持したままベースをドライブさせて迫力を出すためのトラックテクニックです。
御機嫌よう、蟻坂(@4risaka)です。

メタルのベースは歪ませる

メタルのベース、基本は「ギターと同じように弾く」ので、メロディ的には空気になるのですが、結構重要な役割を持っています。

それは、ギターに足りない低音をうまく補うという役割です。メタルのギターはドンシャリ気味の音作りをする傾向があり、余計な低音はダウンチューニングでもハイパスでばっさり切っちゃうことが多いです。
結果として相対的に低域にちょっと余裕ができるので、バスドラムとベースで巧いこと補完してやらないといけません。リフと同じ旋律を弾くのもたぶんこの影響かと思います。

さて、低音を補完するならば低音はしっかり確保しないといけないのですが、一方でメタルのベースは結構歪ませるという特徴があります。メタルは音圧が重要なジャンルなので、ベースも迫力を出すのは重要なポイントです。

しかし、歪ませることで低音が痩せるという問題が発生し、先に述べた「低域を補完する」という役割を見失ってしまいます。でも歪みはしっかり確保したい。さて、どうすれば良いでしょう?

そのようなメタルのベースのジレンマについて、基本的ですがあまり知られていない解決法を共有しようと思います。

ベースを歪ませると低域が痩せる現象について

まずアナライザーで「歪ませると低域が痩せる」ことを示してみましょう。

歪む前のベース

Shreddage Bass 2のEの音をひたすらつなげて弾いて、それをアナライザー表示したものが以下の画面キャプチャになります。音はAmplitube3のベース向けプリセットを適当に挿しただけです。
before

このアナライザー波形の100Hzより下のあたりのカーブを覚えておいて下さい。

歪ませた後のベース

で、これにAmplitube3の「Overscream」エフェクタを挿して適当に歪ませます。「Overscream」はギター向けブースターですが歪ませるのが目的ですので一旦気にしないでください。

歪ませた結果が以下の画面キャプチャになります。
after

パッと見変わんなくね?って思いますよね。では比較してみましょう。

確かに低域が減っている

さて、歪ませる前と後の低域部を並べて見てみましょう。
after2

丸をつけたあたりに注目して下さい。明らかに低域が減ってますよね。
低域の質が変わってしまうのでEQの仕方も当然変化しますし、なによりもともとあった音がどっか行っちゃうのが問題です。どっか行っちゃわないようにしつつ歪ませられたら素敵ですね。

ということで、解決方針としては「低音を失わないようにドライブさせるにはどうするか」という発想で行きます。

低域の痩せを回避して歪ませる方法

それでは具体的な解決策のほうに入っていきましょう。
さきほど方針を打ち立てましたが、冷静に考えたら簡単です。歪ませたら低域がどっか行くなら、歪ませない状態の音と歪ませた音をブレンドすれば良いだけの話です。

原音とアンプ部の2トラックを用意する

というわけで、「歪ませない音」と「歪ませた音」を別トラックで管理します。音源のインプットは1つでOKです。
こんな感じでベーストラックを2個用意して、それぞれのトラックのアウトプットは、1つのグループチャンネルに送るようにします。
basstrk1

で、片方にだけアンプシミュレーターを挿して歪ませます。
basstrk2

それぞれのトラックの特殊なEQ

さて、これだけだと実は原音とアンプ部の音が衝突して低音マシマシになってしまいますので、なんとか解消する必要があります。

というわけで各トラックに以下の様な特殊なEQを施します。
bacctrk3

さきほどアナライザーで見る限りだと、200Hz〜300Hzより下が痩せていることがわかりました。一方、アンプ部のおいしいところは倍音成分が出てくる1kHz以上の帯域なので、そこを残したいところです。
というわけで、とりあえず300Hzを境目にして原音部にはローパス、アンプ部にはハイパスを施して、それぞれの「欲しい音」が残るように仕向けてみます。

そうそう、カット系のEQは「そこから下/上がなくなる」という意味ではないので、完全に消えるわけではありません。またEQプラグインの特性によってカットの切れ味が違いますのでその点は留意下さい。

音量を調節する

で、EQを施しても実はちょっとバランスが悪いです。
なので、トラックのフェーダーをいじって原音部とアンプ部の低音+高音が聴感上ちょうどよくなるように調整する必要があります。

これについてはオケのなじませ方にもよるので詳細な説明を省略しますが、ヒントとしては「低域は高域をマスクする」のに気をつければ良いと思います。
具体的には、「原音部のトラックのフェーダーを少し下げて低音が盛り上がり過ぎないようにする」のが良いでしょう。このほか、アウトプットゲインを調整するのも手です。

あ、もちろんそのままで問題無さそうだったらそれでOKです。

歪ませない音と歪ませた音を混ぜた結果

さて、この状態でグループチャンネルにアナライザーを挿してみると以下の様な結果が得られます。
after3

原音部の美味しいところは痩せる前の低域、アンプ部の美味しいところは歪みのゴリゴリした音、つまり倍音成分です。グループチャンネルにはそれぞれの美味しいところがうまくブレンドされているのがわかると思います。

という具合に、歪ませる前のトラックと歪ませた後のトラックをEQを使いながらブレンドすると、低域を痩せさせることなくゴリゴリした重厚感のあるベースを得ることができます。

まとめ

ベースを歪ませると低域が痩せる、という課題について、以下の様なアプローチを取ることによってその問題を回避することが出来ます。

  • 原音部とアンプ部の2種類のトラックを用意する
  • それぞれのトラックをグループチャンネルでまとめる
  • 原音部には低域との境目のあたりでローパス、アンプ部にはハイパスをかける

「歪ませたら痩せるんだったら歪ませる前の音残せばいいじゃん」というだけの話ですので、論理的に考えたら当然の結果ですよね。これで今日から貴方もゴリゴリしたベースで低域を支えられます。

打ち込みの場合、波形にするのがめんどくさかったりするので最初から2トラック用意して歪み無し/有りで同じMIDIを載っけて管理すると楽かもしれません。レコーディングの場合はDIとアンプで分割するのが良いでしょう。

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